新しく動き出す

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…その日の夜。 龍崎さんはリビングでお酒を飲みながら、ゆっくり話し始めた。 「…恵美。話したいことがあるんだ。」 「…うん。圭吾なに?」 「今日、高山君が部長室に話に来たんだ。」 「う…うん。」 「結婚が決まったそうだ。」 「そ…そう…なんだ…」 「結婚式に、俺は呼ばれたんだけど…良ければ、恵美も来て欲しいそうだよ…どうする?」 「け…圭吾が行くのなら…一緒に行かないとね。」 「大丈夫か…?」 「う…うん。大丈夫です。私は圭吾のフィアンセですから。」 「…恵美」 圭吾が他の女性と結婚する。 それは私自身が望んだことなのだ。 頭では分かっていても、涙は自然と流れるものだった。 私は涙を敬語に見られたくないため、急いでシャワーへと駆け込んだのだ。 いくらシャワーで流しても、涙は止まらない。 楽しかった思い出が、ぐるぐる頭の中を回って離れてくれない。 すると、シャワーを浴びる私に後ろから抱き締める腕があった。 「け…圭吾…濡れちゃうよ…服が…濡れるよ。」 「…構わないよ。」 私は思わず、龍崎さんの胸に顔を埋めて泣き崩れた。 そんな私に何も言わず、ずっと抱きしめてくれる。 優しい手が私の頭を撫でてくれる。 どのくらい時間が経ったのだろう。 私はベットの中で龍崎さんの腕の中にいた。 目を閉じている圭吾に私は小声で囁いた。 「圭吾…ごめんね…もう大丈夫だから…ありがとう。」
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