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「…恵美、早乙女から聞いたと思うが、彼女は君を恨んだりしていない。俺は、彼女を愛していた。別れるつもりもなかった。」
「…では…なぜ…彼女は…」
「…彼女は俺を心から愛してくれていた。だからこそ俺を一番幸せに出来るのは、自分ではないと考えてしまったのかも知れないな。」
「…そ…そんなことって…」
「自分のために…運命の人(女性)を諦めて欲しくないと言ったんだ。そして、自ら命を絶ってしまったんだ…俺のために…」
私は、彼女の気持ちを考えると、悲しくて胸が引き裂かれそうだった。
そんなにも…強く…激しく…圭吾を愛していた女性。
気が付くと、圭吾の手は震えていた。
私はそっと圭吾の震える手を、包むように握りしめた。
圭吾もどれだけ辛かったのだろうか。
見たことのないような圭吾の悲しい表情。
私は圭吾をそっと後ろから抱きしめた。
いつも大人で冷静な圭吾が涙を流している。
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