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「…圭吾、お願いがあるの…」
振り向いた圭吾の顔を真っすぐ見ながら私は話した。
「…っえ…お願い?」
「…うん。あのね…もしよければ、亡くなった圭吾の奥様のお墓に連れて行って欲しいの…」
「…恵美、なぜ…」
「…私は、奥様に圭吾を幸せにすると、約束したいの…直接ご挨拶もしたいし…」
「…恵美…ありがとう…」
私はこれまで自分の事ばかりしか、考えていなかった。
私は立ち上がり、ソファーに座る圭吾を抱き締めた。
圭吾は、私の胸で初めて涙を流していた。
私は圭吾の髪にそっと優しく触れてみる。
すると、圭吾は微かに震えていた。
…愛おしい…
彼女が命がけで愛した圭吾を、私は圭吾を幸せに出来るのだろうか。
彼の頬を両手で包み、顔を近づける。
圭吾の長い睫毛が濡れている。
私はそっと圭吾に口づけた。
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