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健斗は朝起きると、珈琲を淹れてくれる。
今朝も珈琲の香ばしい匂いが部屋を包み込んできた。
少し濃い目の珈琲に、ミルクをたっぷり注ぐのが私のお気に入りだ。
健斗は私のコーヒーカップにミルクを注ぎながら話し始めた。
「恵美、今日は他の支店から営業部長が転勤で来るそうだよ。田中部長も今月末で定年だから、後任だな。」
「そうなんだ。良い人だといいね。」
「なんか噂に聞いたけど、新しい部長は超イケメンらしいよ。恵美、惚れるなよ!」
「大丈夫だよ、私は健斗だけだからね。」
健斗は私にコーヒーカップを手渡すと、後ろからお腹に手をまわし肩に顎を乗せた。
耳元には、少し甘えた優しい声が聞こえてくる。
「分かっているよ。恵美、愛している。」
そんな当たり前の日常が、こんな日々がずっと続くと思っていた
…あの男に出会うまでは…
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