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僕は思わず叫び声をあげてしまいました。
慌ててお父さんとお母さんが飛び出てきました。
「どうした?!」
「どうしたの?!」
心配した声で駆け寄り、尻もちをつく僕をすぐに抱きしめてくれました。
そして事態を把握したのか、廊下に立ったままのお兄ちゃんと僕を見ると「聞いていたんだね」と息を吐いたのです。
「仕方ないね」と僕とお兄ちゃんをリビングへと連れて入った後、お父さんとお母さんは落ち着いた口調で話をしてくれました。
お兄ちゃんは本当のお兄ちゃんではなく、僕のように両親共働きの家庭用に子どもを見守るために作られた機械人形だということ。
子どもの成長に合わせてその都度メンテナンスが行えること。
そのためには年単位で販売元に預ける必要があること。
「お前が大きくなってきたからお兄ちゃんも少し大きくしてもらおうと思うんだ。お父さんもお母さんも仕事があるし、これからもお兄ちゃんに居てもらいたいからね」
「でも、そのためにはお兄ちゃんと少し離れなければならなくなるの」
とても辛そうな顔色で話してくれる間、お兄ちゃんは微動だにしていませんでした。
「少しって、どのくらい?」
僕はホットミルクで温まりちょこっと落ち着いていました。
それでも不安はいっぱいです。
お父さんとお母さんは顔を見合わせていました。
「それは、君が決めてください」
この時初めてお兄ちゃんは他人のような喋り方をしました……それが物凄く嫌でした。
嫌で、嫌で、答えるのも嫌でした。
「ボクをどのくらいの姿にしたいのか、君が決めてください」
お兄ちゃんは微笑んで僕を見ました。
「それが君と離れてしまう期間になる───君と同じくらいか、それともずっと大きくしたいか。君のお兄ちゃんでいさせて欲しいから」
とても人形とは思えない、とても優しくて温かみのある表情でした。
僕はこの時おじいちゃんを思い出してしまいました。
おじいちゃんは僕に「お兄ちゃんは本当のお兄ちゃんではない」と言いました。
けれど「だから、お兄ちゃんはずっと傍にいてくれる」と言ってくれました。
だから驚きはしても嬉しかったのです。
遠くに行ってしまったおじいちゃんや仕事で忙しいお父さんとお母さんと違って、機械人形のお兄ちゃんは僕の傍にいてくれる心強い家族です。
出来るなら何時までもお兄ちゃんでいて欲しいと僕も思っていました。
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