100日目

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襦袢を脱がされ、行灯に照らされた俺の体は決して見目美しいものではないだろう。右足には古傷があるし、女性と違って柔らかさもない。それでも周は、ごくりと生唾を飲み込んだ。 それからゆっくりと後孔に手を伸ばす。ああ、いよいよかと身体中に緊張が走った。 「用意してるから、別に周が何かする必要はない、けど」 「そうみたいだね」 「んっ……」 ぐちゅ、と音を立てて溢れてくる香油を周の指が掬いとる。そのまま中に押し込むように動くから、堪らず震える息が漏れた。縁の辺りを解され、かと思ったら焦れったく出たり入ったりしてくる。予想のつかない動きに、あっという間に翻弄されてしまった。 頭の中がふわふわしてくる。触れられるところ全てが熱を持ち、ますます腹の奥が締め付けられる。自分でぬめり込ませた香油が、とろりと流れ出てくるのが分かった。その感覚に、また恥ずかしさで身体中に熱が生まれる。 「あ、ああっ、あ……っ」 「入れてもいい?」 「いい、から、早くって言ってる……!」 「聞きたいんだ。君の言葉で」 「……っ、あ、入れて、はやく、指……、っ、奥まで……っ!」 涙の混じる声で必死に懇願すると、急に周はぐっと眉間に皺を寄せた。そして、そのまま何も言わず一気に指を押し入れてきた。 突然の衝撃に息が詰まる。目の前に、火花が散った。 「んああ、あ、あっ!」 「あつい……」 「あ、あまね、っ、まって、急にはだめ……っ!」 「怖い?」 「ちがう、っ、気持ちいい、から……っ」 自分の指では届かなかったところに、周が居る。まだ指だけなのに少しずつ何かで満たされていく気持ちになった。 足先からじわりじわりと熱が込み上げてくる。 「あまね、やだ、とおい」 「うん……じゃあ、近くに居る」 「ん」 縋るように手を伸ばす。それは無意識の仕草だったけれど、周は嬉しそうに抱きしめてくれた。体が近づいたせいで、先程よりも強度を増した熱が押し付けられた。もうずっと我慢させている。本当は早く入れたいだろうに、俺のために時間をかけてゆっくりと解してくれている。 ぐちゅぐちゅ鳴る粘ついた音は恥ずかしいし、もう何も考えられないけれど。 ああ、愛おしいと。ただそれだけは、はっきりと理解出来た。 「珠希、口開けて」 「ん、ぁ」 「そう。いい子」 呼吸をする前に深く口付けられる。必死になって舌を絡ませ、溢れてくる唾液を啜りあげた。そうしている間にも周の指は激しく動き回る。 いつの間にか指は三本に増えていたけれど、圧迫感や不快感よりも充足感の方が強かった。「ん、ッ、んん」 腰が揺れる。息が苦しくなってきたけれど、口付けをやめたくはなかった。少しでも離れると死んでしまうかのように、お互い夢中になって貪り続ける。 ぴったりと重なった魔羅は、どちらも先走りが流れ出て熱く、硬くなっている。周も興奮しているんだと思うと、腰が甘く痺れた。 「っ……、締まったね」 「ばか、言うな、そんなことっ!」 「うん、ごめん……私も余裕がないんだ」 そんなこと、顔を見たらすぐに分かる。苦しげに歪めれた眉、額から流れる汗、乱れた呼吸。普段の周からは想像もつかない姿だ。 それらが全て俺によるものかと思うと、もう、堪らない気持ちになる。 「もう、いい?」 「ん……」 全身で抱きしめたかった。腕を伸ばして抱きつくだけじゃ足りない。もっと、深いところで。体全身で、周を愛したかった。 「力抜いて」 「は……っ」 後孔にぴたりと熱い何かが触れた、何か、なんて。そんなの一つしかない。指とは比べ物にならないほどの大きさと熱さだ。本当に入るのだろうかという不安が生まれてきて、無意識のうちに周を抱き寄せる。 意図を察してくれたのか、優しく唇を食んでくれる。 「ん、ぅ……っ、ん、んんっ、ん、あ、ああ……っ!」 「……っ、は……」 ぬぷ、と音を立てて先端が入り込んでくる。体が裂けていくような感覚に襲われた。痛みはない。でも、違和感は拭いされない。 でも周は何度も優しく口付けをしてくれるから、気持ちいい感覚も与えられて、もう何がなんだか分からなくなった。
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