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101日目
喉の掠れで目が覚めた。軽く咳き込むと、身体中が甘いだるさにまとわりつかれていた。普段は痛まない箇所がじんわりと熱を帯びている。瞼がやけに重たかった。
見慣れた天井、使い慣れた布団、そのはずなのに何かが違う。まるで、薄皮が一枚剥がれたように景色が澄んで見えた。
「おはよう。体の具合はどう?」
「あ、まね」
囁くような声が、嫌でも昨夜のことを思い出させる。嫌、ではなかったけど、恥ずかしかった、様々なことを。
「どこか痛むところはある?」
「まあ……それなりに」
「そう、だよね……ごめん」
「どうして謝るんだ。痛いけど、別に嫌じゃない」
むしろその逆で、この痛みがあるから俺は昨夜、周に抱かれたことが夢ではないと確信できるんだ。目が覚めて、もしも隣に誰も居なかったらきっと俺の願いが見せた幸せな夢だったのだろうと勘違いするところだった。
だから、身体中が痛いことも、身動き一つ取れないほど強く抱きしめられていることも、何一つ嫌じゃないんだ。
「むしろ、どうだったんだ……貴方の方こそ」
「……それ、聞くんだ」
「俺ばっかり貰っているのは気が済まないんだ」
「君だけじゃ、ないよ」
周の腕に、ぎゅっと力が込められた。強すぎず、でも決して弱くはない。逃げ出す気なんか奪ってしまう、優しい拘束だった。
しっとりとした素肌からは嗅ぎ慣れた白檀の香りがした。
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