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兄と弟
【ケース①】
体が植物になる病は前兆などはなく、ある日突然、体が変質する。大抵は膝から先が植物の根へと変わる。そこから徐々に植物へと変わっていくのだ。どの植物になるのかは決まっておらず、すでに存在している様々な植物へと変わる。
今まで食べていたものは喉を通らなくなり、体が受け付けなくなる。水物であれば嗜好品も飲めるが、それも次第に水以外は受け付けなくなってしまう。
体が前触れもなく変質してしまうため、治療法はない。根が出てしまえば、植物になる他ないのだ。
遺伝子がどうのと言われてはいるものの、決定的なものは何も見つかっていない。未知で不治の病なのだ。
「ねぇ、僕は食べられる植物になりたいな」
物騒なことを呟く弟の頭を軽く小突く。弟の下半身はすでに根に変わっている。もう水しか受け付けず、全身が植物になるのも時間の問題だろう。
「この根を見る限りさ、木ではないと思うんだよね。細くて何株にも分かれてる感じでしょ? なんだと思う?」
植物になるのを悲しむ様子もなく、弟は興味津々といった様子で聞いてくる。
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