Takashi said "Ring"

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Takashi said "Ring"

 ジャッと鳴らした弦を、軽く指板を押さえて止める。目を合わせてる正人さんも、同時に止めてにっと笑う。  上々ですね、この曲も。  間近に迫ったライブに向けてのリハーサル。延長してるレコーディングはまだ途中で、俺はまだこれを録ってない。でも、レコーディング前に念入りに合わせてるし、完成図は概ね見えてる。  ま、録った時にまた変わるかもしれないけどね。  完成度はもっと上に持って行けるけど、基本線はこれでなかなかだな、なんて考えながら見回すと、鳥坂さんも真木も満足そうに笑みを浮かべてる。 「おい、真木」  真木に声をかけると、鳩が豆鉄砲食ったみたいにシャキッと背筋を伸ばして瞬きする。 「はいっ」 「手ぇ抜いてんじゃねぇっつってんじゃん」 「抜いてませんよう!」  面白いなぁ、こいつ。真面目で必死に着いてきてんのはわかってるんだけど、ついついいじりたくなる。 「サビ前のフレーズ……ねぇ、斯波さん?」  正人さんに同意を求めると、正人さんも腕を組んで頷く。 「何回目だ。もうちょい俺の音を聴けよ」 「すんません……」  真木はしゅんとして、うつむき加減でスコアを見始めた。
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