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ゾンビ映画撮影
太陽が垂直に登った時間。芝草の上で私は座り込む。脇の下から出た汗が涼しさのかけらもないピンクのセーラー服に染みを作る。こんな真夏の炎天下で腸詰めウマウマよ? 男のこれはソーセージじゃないよ。あ、エロい意味じゃなくてね、草の倒れている役者さんのね腸。役者さんは上半身の胸までは本物なんだけど、そこから下の部分は穴を掘って埋まってて、その上に偽物の皮膚をかぶせてる。もちろん下半身も。腹から下がダミー人形。腸入りのね。
それで、役者さんは痛みを堪えきれず泣き叫ぶ演技をするの。私の顔を憎々しげに見つめて腕を伸ばしてね。え? 私? ハルカはほんとに食べてないよ。血肉を歯で引きちぎるんだけど、これは肉っていうよりゴム製の腸のガムだから飲み込めない。噛むだけの撮影だから歯茎が痛くなるまで口に入れる。ずっと終わらないガムで疲れる。うえってなるけど、ベリー味の血糊のおかげでなんとか耐えられる。てかさ、どうして人の臓物に顔を突っ込んで食べないといけないのかなぁ?
ゾンビって。こう、もっと他にもかじりやすいところがあるでしょ? 腕とか。まあ、腕を噛まれるのは定番で最近はガムテとか巻いたりして防いでいる映画もチラホラあるよね。まぁ、私の知ったこっちゃない。てかね、私はこんな仕事より歌って踊りたいのよ! どうして私のチャーミングな姿をちっとも活かせない短編映画なんかの仕事を取ってきたのか理解に苦しむわ。
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