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「ふむ……」
話を聴いて、暫く考えた後。アリエルはお茶のおかわりを注ぎつつ、口を開いたのだった。
「実は、最初にこの部屋に来た時におぬしの机の上に散らばっていた原稿や同人誌をざっと見させて貰ったのだがな」
「う゛」
「ああ、そう警戒するではない。あれを見て、おぬしは才能があるなと思ったのだ。申し訳ないが、絵が上手いかどうかについては我が惑星の美術作品と方向性が違いすぎてわからなかった。しかし、それ以外のことはわかるのだ」
「それ以外のこと?」
「登場人物の台詞回しなど、だ。ああいうものを読めばおのずとわかるというもの、それを書いた人間がどれほど賢いのかということはな。実は、俺がおぬしの世話になろうと思った理由の一つはそこにある。この人物とは、有意義な交流ができそう、だとな」
まさか、二次創作の同人誌の漫画原稿を見てそのような感想を貰うとは思っていなかった。思わず小夏は、“私そんな有名大学とか出てないけど”とぼやいてしまう。
「違う。人の賢さとは、学歴で図れるものではない。そもそも、知識が豊富な賢さと、頭の回転が速い賢さは別のものであるしな。あのような漫画の原稿でも充分分かる。おぬしは語彙が豊富だ。そして、キャラクター同士の掛け合いのテンポが非常に良い。これは恐らく、おぬしが日頃から人を“観察すること”に長けているから、人と良いコミュニケーションを図ろうという強い意思があるからこそだと判断した。俺が言いたい賢さとは、そういう類のものだ。おぬしにはそういった才能があるのだ、胸を張るがいい」
なんとも偉そうな物言いではあるが、褒めてくれていることは伝わってくる。というか、親にだってこんな風にべた褒めされたことがあったかどうか。
「あ、ありが、と……」
思わず俯いてしまう小夏。真正面から、アリエルのキラキラした顔を見るのがなんだか恥ずかしい。
「で、俺が言いたいのはだ。おぬしには、それだけの価値があり、能力があると言いたいということ。確かに失敗や困難を毎回人のせいにばかりしているような人間は成長できぬだろうが……かといって、自分にどうにもできないことまで自分のせいと思うのはかえって傲慢なことであるぞ?何故、自分の力をもっと認めようとしない。聞くに、おぬしの得意分野に合わない仕事を押しつけてきているのは会社の方ではないのか?」
想像以上にまともな意見が来て困惑してしまう。異星人というから、もっと斜め上のアドバイスが来てもおかしくないと思っていたのに。
「ああ、ちなみに我がルディアの惑星でも会社というものはあるぞ。我が国では王族であっても仕事をするのが勤め。国王になるまでは民間企業で働くので、俺も仕事というものはわかっているつもりだ!まあ、この国の労働ほど厳格なものではないがな」
「そ、そうなんだ?」
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