<1・帰ってきたら居候が増えていた。>

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 ***  きちんと玄関に鍵はかけていったはずだ。 「ああ、俺はどんな鍵でも開けられるスキルを持っているのでな。侵入するのは全然難しくないのだ!」  そして、一応このアパートには管理人もいるし、近隣住民もいるのだが。 「体のサイズと外見年齢と性別は自由に変えられるのだ。だから人目から隠れるなど造作もないことであるぞ!……あ、よく考えたら鍵など開けず、米粒大になってドアの隙間から入れば良かったなあ!」  そもそも、自分のようにとりたてて特徴もない、強いて言うなら生粋の腐女子のところにそんな人外が訪れる理由など何もないと思うのだが。 「このアパートの庭に宇宙船が墜落して困っていたのだ。宇宙船はどうにか隠したが、いかんせん俺が住める状況ではなくなってしまったのでな!たまたまいい匂いがしたこの部屋にお邪魔させていただくことにしたのだ!そうしたら、部屋の中には何やら興味深い本の類が大量に……」 「あああああああああああやめてええええええええええええええ!!」  どうしよう、ツッコミが追い付かない。こんな大声で叫んだのは何年ぶりだろう。ああ、両隣に騒音に煩い住人が住んでいなくて良かったと思う、切実に。  どうやら、外見年齢二十歳前後のこの青年、宇宙人だというのである。確かに、人間にはなさそうな触覚とか羽根とかあるし、長い髪の毛の色も目の色も目が覚めるように美しい緑色をしているが。  何でよりによって、宇宙船がうちのぼろアパートの敷地に墜落するなんてことになるのか。そして、たまたま苺のショートケーキを冷蔵庫に買って入れておいただけの独身OLの部屋に来るのか。  でもってその大事にとってあったショートケーキが勝手に食われた挙句、部屋にため込んでおいた大量の同人誌と書きかけの原稿を目撃される羽目になるなんて、悪夢としか言いようがない! 「えっと、どうして叫ぶのだ?桜坂ミチル殿?」 「それは私のハンドルネーム!本名は長谷川小夏です!というか人の恥ずかしい同人誌勝手に見るのやめてくれる!?」  いくらアパートの住人が大人しいとはいえ、大声で騒いだら迷惑になるのは間違いない。私は声量を抑えようと必死になりながら、ずばっと玄関を指さして言った。 「お願い、出てって!でないと警察呼ぶからね!?」  イケメンは嫌いじゃない。むしろ、かっこいい男の子は大好物である。  が、それが異星人を名乗る、ちょっと頭がおかしいかもしれないコスプレ男子なら話は別。正直関わり合いになりたくない。そりゃ、彼がただのコスプレ男子なら、密室であったはずの部屋にどうやって侵入したの?とかどうやって近隣住人に騒がれずにここまで来たの?とかの謎は未解決になってしまうけれども。  いきなり、私は宇宙人デスー、なんて言われて信じられるはずがないではないか。そういうのは、ライトノベルか漫画かアニメかゲームの中だけで結構なのだ。そう、いくら目の保養になりそうなキラキラ系イケメンであっても駄目なものは駄目なのである! 「そんなことをされては困るぞ」  彼は眉を八の字にして言った。
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