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とはいえ料理もしないもんだから、コンビニの弁当くらいはしょっちゅう買っている。電気代を節約したくて、ぶっちゃけお弁当を温めるのも控えているほどだ。その結果、そこそこ貯金はたまっているが、それもそれケチな性格とオタ活資金のためにろくに使うことはせず――まあようするに、出来立ての、温かい料理を食べる事なんか一年で本当に僅かしかないのである。そう、正月に実家に帰る時くらいなのだ。
オムライスは好きだけれど、大好物というほどではなかったはずである。しかも、見たところ食材はかなり節約している。それなのに――最低限の具材と調味料だけで、こんなに美味しいとはどういうことなのか。ご飯なんて、レンジでチンしたご飯を使っただけだというのに。
「そうか、美味しかったなら良かった!」
彼は心底嬉しそうに頷いた。
「俺は、名前をアリエル・ルディアと言う。アリエルでもアリーでも好きなように呼んでくれたまえ。世話になるのだから、何なら毎日食事くらいは作るぞ」
「え」
まずい。ものすごく胡散臭い宇宙人(未だに半信半疑だが)だというのに、提案は滅茶苦茶魅力的である。はっきり言って、オムライスが美味しすぎて完全にほだされた形である。こういうものを毎日食べられる、とというのはかなりありがたい。絶対元気が出るだろう。
「ああ、多少食費は出して貰わないといけないが。いかんせん、宇宙船に積み込んでおいた食材だけではどうしても足りぬのでな。それから、炊飯器とトースターも購入許可を貰いたい。無理にとは言わないが」
「ほ、本格的にうちに住む気なんだ。そ、そこまでして何で?」
小夏は戸惑う他ない。多少の食費はまあ、出してもいいと思う。貯金もあるし、炊飯器やトースターも安いものならば買えるだろう。
だが、世の中にはもっとまともなキッチン用品がある家なんてごまんとあるのである。たまたまいい匂いに魅かれたから、というくらいで小夏の部屋に居座る理由はないはずである。
それに、この様子だと彼はどうしても料理がしたい事情があるようにも見えるのだが――。
「ふむ、やはりそのへんはきちんと説明しなければならないか」
アリエルと名乗った青年は、腕組みをして頷いた。
「それについてはまず、我が母星の事情から話さねばならぬ。我が母星は、惑星国家ルディア。俺の苗字と同じなのも当然、俺はその王国の王子なのだからな」
「お、王子様ぁ!?」
何だそのラノベ感凄い設定は。思わずそうツッコミかけて小夏は止まった。
しがないOLの目の前に宇宙人がいて、突然オムライスご馳走になってる時点で充分すぎるほどラノベ展開だったと。しかもイケメン。まあ、世間一般的には双方の性別は逆の方がウケるのかもしれないが。
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