<2・異星人とオムライス。>

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「ルディアの星は、この地球から何千万光年も離れたところにある。しかも、我々の銀河形態のあたりには好戦的な惑星が多くてな。長らく、侵略の恐怖に晒されてきたのだ。国王陛下にして我が父は、軍事力を強化することによってどうにか多くの星の侵略を耐え忍んできた。しかし……」 「しかし?」 「長引く戦乱と、それから他の惑星からの食糧の輸入が乏しくなったことで、我々の惑星は慢性的な食糧不足に陥っているのだ。正確には人工食糧を工場で作ることで凌いでいるが、どれも画一的な食感、画一的な味のものばかり。料理人の多くは仕事がなくなり、クビになっていく始末。戦争で疲れ切った上、食事を楽しむこともできなくなった人々の心は酷く荒んでいる。……俺はそのような光景に、ずっと心を痛めてきたのだ」  ゆえに、と彼は指を一本立てた。 「よその惑星に、素晴らしい食材や料理がないか、俺自らが捜しに行く旅をすると父に進言したのだ。周辺の惑星はほとんどがブロック経済状態でほとんど食料の輸出をしてくれない状態であるが、惑星国家ルディアの存在さえ知らぬ遠く遠く離れた惑星にならば、まだ我々に技術や食料の取引をしてくれる星があるのではないかと。そうして、俺は奇跡の星である、この地球に辿りついたというわけだ!」 「で、うっかり宇宙船が故障してしまった、と」 「うむ……その通りである」  しょぼん、と肩を落とすアリエル。触覚がしょんぼりと垂れ下がっている様は、落ちこんでシッポが垂れている大型犬を彷彿とさせるものだった。正直、可愛い。 「どっちみち、もっとこの国の食を勉強しでからでなければ帰ることはできぬと思っていたのでな。……できれば長谷川小夏、おぬしの家に滞在させてもらい、地球の料理を勉強・研究させてほしいのだ。何、食材と必要な道具の買い出しのための資金を多少出してくれるだけで問題ない。俺の衣服の類などは宇宙船に積んであったものを使うし、ベッドもいらぬ」  ぽん!と軽い音がした。小夏は口を“О”の字に開けて固まることになる。目の前に座っていたイケメンが、突然消滅したのだから当然だ。一体どこに、と思った次の瞬間。 「我々ルディアの民の最大の問題は、小食であることなのだ」 「!」  彼は消えたわけではなかった。はっとして見下ろせば、小夏のオムライスの皿の横にちょこん、と座る影。彼は同じ姿のまま、掌サイズまで縮んでいたのだ。 『体のサイズと外見年齢と性別は自由に変えられるのだ。だから人目から隠れるなど造作もないことであるぞ!……あ、よく考えたら鍵など開けず、米粒大になってドアの隙間から入れば良かったなあ!』
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