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――こ、こ、これは流石に手品じゃ説明できない……!
本当の本当に、宇宙人だというのか。流石にこんなものを見せられては、彼の話を与太話だと切り捨てることもできない。
「地球人と比べて、相当燃費が良い種族ということになるのだろうな。一日に食べる量が極めて少量で、おぬしらのように排泄も必要ない。ああ、風呂には入れさせて貰えると助かるが。多分、これくらいのサイズが我々の本来の大きさだったということなのであろうなあ……」
「ち、ちっさ……!それならまあ、食糧少なくて済むのもわかるけど」
「うむ。ゆえに、地球からそう多くの食材を分けて欲しいとは思っていないのだ。そもそも農産物や畜産の技術を教えてもらい、一部の原種を輸入させてもらえればあとは自分達の土地でどうにでも育てられるのでな。ただ……問題は、我々がこのサイズに見合ったくらいしか、食事が取れぬということなのだ」
再び軽やかな音がして、彼が元のサイズに戻る。服も一緒に伸び縮みしているようだし、どういう仕組みなのだろうか。
「つまり、食事を作っても自分達ではちょっとした味見しかできぬということ。……おぬしのように、たくさん食べてくれそうな地球人の世話になるしかないのだ。我々にとって一番足らないものであるからな」
それに、と彼は続けた。
「何より、先ほどのおぬしの顔はとても良かった!とても美味しそうに食べてくれて、俺も幸せな気分になれたぞ!俺は、我が星の民にも同じように笑って欲しいのだ!……頼む、俺を家事手伝いで雇うと思って、しばしこの家に置かせては貰えないだろうか!」
「う、うう……」
ここまで言われてしまったら、断るに断れない。というより、正直殆ど小夏にほとんどデメリットがない。
唯一心配なのは、一点だけで。
「……わ、私の同人誌とか、見て見ぬふりしてくれる、なら」
それも既に見られてしまっている以上、もはや、という気しかしないわけで。
小夏がしどろもどろに言うと、アリエルは顔を輝かせて言ったのだった。
「本当か、小夏!ありがとう、恩に着るぞ!!」
こうして。
ぼっちOL長谷川小夏と、料理上手なチート異星人アリエル・ルディアの奇妙な共同生活が幕を開けたのである。
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