9人が本棚に入れています
本棚に追加
<3・ポテトサラダとサンドイッチ。>
翌日が平日である場合、小夏は必ず夜にヨーグルトを作ってから寝ることにしている。
作る、というと誤解されるかもしれないが、既製品の低糖ヨーグルトにフルーツの缶詰の中身をぶちこんで、タッパーに入れて冷蔵庫に入れておくというだけである。殆ど料理というほどのものではない。次の日の朝食代わりだった。
何故、大食いという自覚のある小夏がそのくらいのもので朝を済ませるのかと言えば単純明快、朝複雑なことをしている時間の余裕がないからである。
家を八時に出れば会社には間に合う、のでけして出勤時間が一般的な社会人と比べて早いわけではない。それでも、朝に弱く起きるのに三十分かかり、同時に一人暮らしなので洗濯器だけは回して干して行かなければいけない身、真っ当な朝食を作っている余裕など皆無なのだった。
本当ならもっと朝ごはんをきっちりがっつり食べていった方がいいのは自分でもわかっている。なんせ、お昼前の時間にいつもお腹が減って死にそうになっているのだから。そのくせ、晩御飯はともかく昼ごはんまでは食費をケチりたいという精神が働き、昼ごはんは多くてもパン二個とサラダ一つといった具合。はっきり言って、大食漢の小夏には全然足らないのである。
そう、だから。
――ああ、しまったやらかした。昨日、いろいろあり過ぎてヨーグルト作るの忘れてた……。
と、朝起きて早々に思い。
その直後。
――って、何かいい匂いがするう!?
で飛び起きる結果となるのである。朝のハラペコの鼻は正直だった。いつもよりずっとすぐに目が覚めるくらいには。
パジャマのままそろりそろりと布団から這い出すと、キッチンから特徴的な緑色の触覚がちょこんと覗いているのがわかった。
「おお、おはよう!起きたようだな!」
アリエルである。
「本来ならばこの国の人間は、朝食は味噌汁と白米がいいらしいが……残念ながらこの家にはまだ炊飯器がない!今日はパンで我慢しておくれ!」
「そ、それはいいけど、何作ってるの……?」
一体いつから起きていたのだろう。昨夜、小夏はきちんと布団に入って寝たが、彼は小夏の許可を得た上でずっとパソコンで調べものをしていたようだった。いつ、どこでどうやって寝たのか自分はまったく見ていない(ちなみにできればブックマークとか、お宝フォルダとか履歴とか見ないでくださいお願いします、とは言ってあった)。
布団は一組分しかなかったが本人はいらないと言っていたし、宇宙船の中に自分用の寝具でもあったのだろうか。本人いわく墜落したという宇宙船を、まだ自分は見ていないのでなんとも言えないけれど。
「ふむ、ポテトサラダだ!」
相変わらず、彼は元気がいい。
「ポテトサラダは、野菜を食べることもできて栄養バランスがいいようだ。というわけで、現在ジャガイモをゆでているところだな」
最初のコメントを投稿しよう!