Phase 01 チキン

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 尾崎昭と山谷組の付き合いは長い。かれこれ30年間のも付き合いを持っていると言われている。尾崎昭は通称「芸能界のドン」と言われており、度々商売敵である梅松芸能の社員に対して暴力沙汰を引き起こすことも多かった。しかし、それらはすべて山谷組による金の力でもみ消されていた。それは、事実上吉竹興業が山谷組から賄賂(わいろ)を貰っているということである。  一方、吉竹興業に所属している芸人の一人である鳥田信康も山谷組との間に太いパイプを持っていると言われているが、長年真相は闇の中に包まれていた。  しかし、文潮出版の関西支部で長年ゴシップ記者を勤めていた井川公好の手によって民衆に鳥田信康の黒い闇が晒されていた。  当然、ネット上での鳥田信康に対する誹謗中傷は絶えなくなった。  「芸能界を引退しろ。」  「上司にしたい芸能界の一人だったけど、これじゃあただのヤクザじゃない か。」  「今から思えばあのクイズ番組での脅迫騒動はヤクザとのコネクションを持っていたからだったのだろうな。」  ――これが、世間体の声である。  「我々大阪府警よりもゴシップ記者のほうが真相に迫っているじゃないか。伴君、あれから捜査の進捗はどうなっているんだ。」  「亀田警部、吉竹興業から押収した資料は現在精査しているところです。でも、ガサ入れの中で怪しい帳簿を見つけたんですよ。帳簿に書かれていた会社名はヤクザのフロント企業にしては妙な会社名でした。あからさまにペーパーカンパニーか存在しない会社名だと思うのですが・・・。」  大渡秋彦が見つけた帳簿に書かれていた「竹鋸興産(たけのここうさん)」という企業。それは所謂(いわゆる)ヤクザのフロント企業と呼ばれるものである。  ヤクザは表の顔としてフロント企業を構えているケースが多く、それらは実体を持って表社会に擬態しているのである。  フロント企業は主にギャンブルや映像制作等に関わっているケースが多いが、暴対法が厳しくなった昨今では土木建築や産業廃棄物を受け持っていることが多い。  「竹鋸興産か・・・。それは怪しいな。」  「名刺に書いてあった住所を調べたのですが、どう見ても廃ビルでした。恐らく名ばかりのフロント企業の可能性が高い。」  「そうか。伴君、今回はご苦労だった。この件は引き続き伴君と大渡君で捜査してくれ。」  「亀田警部、分かりました。」  そう言いながら、伴正義は自分のデスクへと戻っていった。  伴正義と大渡秋彦のデスクは隣同士である。  「伴先輩、僕の初めてのガサ入れはどうでした?」  「吉竹興業と山谷組の繋がりを示す確実な資料も見つけたし、点数をつけるならば80点ぐらいかな?」  「80点・・・。なんだか微妙な点数ですね。」
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