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「目が覚めて、独りぼっちだった僕の気持ちがわかる?」
「あなたはいつもそうだよね。やさしくしてくれたと思ったら、僕を突きはなす」
「僕が嫌いならそう言ってよ。悪いところがあるなら、なおすから」
「ねぇ、なんでだまってるの」
「教えてよ、ねぇ……!」
力任せに手首をつかまれて、視界がまわります。
ぐるぐると、脳がゆさぶられるようです。
あぁ……やっとだわ、と魔女は思いました。
ようやく、ついに。
「──壱」
紅を塗らなくても真っ赤な唇が、言葉をつむぎます。
ふいに呼ばれた壱は、衝撃でかたまってしまいました。
「これで、解放される」
熱に浮かされたように、魔女は続けます。
「わたしは、死にたかったの」
それは、ビードロを鳴らすよりもきれいな声で。
笑みを浮かべた魔女のからだは、糸が切れた人形のようにくずれ落ちました。
「魔女さん……? なんでっ、魔女さん、魔女さんッ!!」
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