幸せになるために

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「魔女さんは、じぶんでは死ねないんだよね?」 「でも、怪我や病気をたくさん『吸い取る』か、他人に心臓を刺されたら死ねるってきいた」 「僕に、殺させようとは思わなかったの?」  それはいけません。  そんなことをしたら、(いち)が傷ついてしまいますから。 「そうだよね。魔女さんは、そういうひとなんだよ」  どういう、ひとなのでしょうか。 「ねぇおぼえてる? 僕がここにきたばかりのこと。魔女さんに反抗ばっかりしてた」 「そうしたら、ビードロをくれたよね。ヘンテコな音で、おかしくなっちゃって」 「いつの間にか、ほっとしちゃってた」 「そうやってさ、宝物みたいにたいせつにしてたものをくれたの」 「そういう、やさしすぎるくらいやさしいあなたを、好きにならないわけがない」  そういえば、壱は言っていました。  ──あなたは僕にとって、特別なひとだよ、と。 「なんにも知らなくて、ごめんね」 「つらい思いをしてたのに、気づいてあげられなくて、ごめんね」 「でも、もっとごめん。僕は魔女さんを、死なせてあげられない」 「ごめんね、恨んでいいよ。それでも僕は、魔女さんが好き、大好き」 「僕を育ててくれて、いっぱい愛情をくれて、ありがとう」
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