6人が本棚に入れています
本棚に追加
嗚呼。
雨に濡れて、おびえていた子猫のような少年は、いつの間に、こんなに大きくなったのでしょう。
立派に成長してゆくすがたを毎日見守っていたはずなのに、いまさらになって思い知るなんて。
「おねがい、魔女さん。いっしょに生きてよ。おじいちゃんになっても、そばにいたいよ」
『あなたが必要だ』と、壱は言うのです。
それは、何百年と生きてきた魔女が、欲してやまない言葉でした。
魔女だから。
親に捨てられたから。
不幸に生まれたから、不幸なんでしょうか?
いいえ。
「これからふたりで、幸せをつくっていこうよ」
未来は、つむいでゆけるのです。
ほかのだれでもない、じぶんたちの手で。
それに気づいてしまったから、ほら。
死にたいなんて、言えなくなってしまったではないですか。
「魔女さん、大好き」
まばゆいえがおで、とどめのひと言でした。
最初のコメントを投稿しよう!