幸せになるために

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 嗚呼。  雨に濡れて、おびえていた子猫のような少年は、いつの間に、こんなに大きくなったのでしょう。  立派に成長してゆくすがたを毎日見守っていたはずなのに、いまさらになって思い知るなんて。 「おねがい、魔女さん。いっしょに生きてよ。おじいちゃんになっても、そばにいたいよ」 『あなたが必要だ』と、(いち)は言うのです。  それは、何百年と生きてきた魔女が、欲してやまない言葉でした。  魔女だから。  親に捨てられたから。  不幸に生まれたから、不幸なんでしょうか?  いいえ。 「これからふたりで、幸せをつくっていこうよ」  未来は、つむいでゆけるのです。  ほかのだれでもない、じぶんたちの手で。  それに気づいてしまったから、ほら。  死にたいなんて、言えなくなってしまったではないですか。 「魔女さん、大好き」  まばゆいえがおで、とどめのひと言でした。
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