魔女のねがい

1/4
前へ
/15ページ
次へ

魔女のねがい

 この世界で魔女と呼ばれる女性たちには、共通点があります。  黒髪に蒼い瞳をもち、美しいこと。  何百年もの年月を生き、決して病にかからないこと。  そして──じぶんでは、いのちを絶つことがかなわないこと。  いつからか、魔女はしにたいと思うようになりました。  おなじようなことをくり返すだけの日々を、苦痛に感じるようになったのです。  そんなある日のこと。 「けほっ、けほっ……ごめん、魔女さん。風邪が長引いてるみたい」 「そんなにつらくはないから、朝食、作るね……けほっ」  起き出してきた(いち)が、咳き込んでいます。  えがおをつくろっていますが、こうした咳が、もう二週間も続いているのです。魔女も不審に思います。  よくよく観察をして、壱を悩ませる咳の正体に気づいた魔女は、飛び上がりました。 「え、どうしたの、魔女さ──うわぁっ!?」  台所へ向かう壱の腕をつかんで、部屋まで引きずり、寝台(ベッド)へほうり投げます。 「寝てろって? 朝食は? 学校は?」  この期におよんで、まだそんなことを言うので、魔女は目を三角につり上げてにらみつけました。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加