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魔女のねがい
この世界で魔女と呼ばれる女性たちには、共通点があります。
黒髪に蒼い瞳をもち、美しいこと。
何百年もの年月を生き、決して病にかからないこと。
そして──じぶんでは、いのちを絶つことがかなわないこと。
いつからか、魔女はしにたいと思うようになりました。
おなじようなことをくり返すだけの日々を、苦痛に感じるようになったのです。
そんなある日のこと。
「けほっ、けほっ……ごめん、魔女さん。風邪が長引いてるみたい」
「そんなにつらくはないから、朝食、作るね……けほっ」
起き出してきた壱が、咳き込んでいます。
えがおをつくろっていますが、こうした咳が、もう二週間も続いているのです。魔女も不審に思います。
よくよく観察をして、壱を悩ませる咳の正体に気づいた魔女は、飛び上がりました。
「え、どうしたの、魔女さ──うわぁっ!?」
台所へ向かう壱の腕をつかんで、部屋まで引きずり、寝台へほうり投げます。
「寝てろって? 朝食は? 学校は?」
この期におよんで、まだそんなことを言うので、魔女は目を三角につり上げてにらみつけました。
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