第五章 勇者姫絶望!

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第五章 勇者姫絶望!

 モチラナは洗礼を終え、正式に勇者と認定された。偶然に聖剣エクスカリバーを抜いてしまっただけで勇者にされてしまった彼女は当然乗り気ではない。尚且、洗礼を受けたネイバーヘイムの国が「搾取」によって発展したと言う真実を知り「人」と言うものがイヤになり始めていた。ネイバーヘイムを出立し、魔王の城への道中、モチラナは浮かない顔をしていた。その道中の魔物の相手は全てカルルマン任せ、カルルマンが大凡(おおよそ)素手や革靴(レザァシューズ)から繰り出されるとは思えない「粉砕」や「破壊」を引き起こす程の攻撃で魔物達は死屍累々と屍を積み上げていく。ゴブリンやオークは言うまでも無く鎧袖一触、大蛇や獅子や大熊なども燕尾服(スワロォテイル)が宙を舞った瞬間に致命の一撃を受けて倒されてしまう、全身鎧を着込んだ魔物であろうとカルルマンの拳の一振りで破城槌を打ち込まれた盾のように凹み全身鎧の内部で体が激しく振動(シェイク)されるのか瞬く間に戦闘不能にまで陥ってしまう。 つまり、カルルマンが強すぎるのである。もしかしてカルルマン一人で魔王の討伐に行った方がいいのではないか? モチラナは自分の勇者としての価値に疑問を持つようになっていた。それをカルルマンに言うのだが…… 「出来ればやっています。ですが、魔王は聖剣エクスカリバーでしか倒せないのです。そして、聖剣エクスカリバーはお嬢様にしか使えないのです」 「はいはい、最後だけしかあたしは求められてないってことですか」 「預言に定められておりますので…… これまではご辛抱下さいませ」 「ねぇ? 魔王を倒したら…… あたしは勇者じゃなくてただの貴族の娘に戻れるのかな?」 「どうでしょうね。今のお嬢様の剣の腕ではゴブリンどころか野犬の一匹を相手にすることすら危ういでしょう」 「……ハッキリとモノを言うな。カルルマンのそういうところ好きだ」 「恐れ入ります。私の役目はお嬢様を立派な淑女(レディ)にすることで御座いました。立派な淑女(レディ)は自分に出来ること出来ないことをハッキリと把握しているものです。私からそれをお教えするのも役目で御座いますので」 「執事としては立派ね。少しは優しさはないの?」 「例えお嬢様に蛇蝎のように嫌われようと、お嬢様が立派な淑女(レディ)になる為に必要であればいかなる罵倒も辞さないつもりです。これが私の主従関係で御座います」 「初めて会った時は全身泥まみれ傷まみれの野良犬みたいだったのに…… あたしもあの時は後悔してて頭の中でモヤモヤしていたからね…… あなたを買ったのは贖罪ってのもあったかもしれない」
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