第一章 勇者姫誕生!

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第一章 勇者姫誕生!

 その日は普通の朝だった。どこにでもある朝である。 カーテンの隙間より入る朝日を浴びることで一気に体が覚醒状態に至る少女がいた。 その少女は瞬く間に目覚めるも、朝の弱い体質のせいか天蓋付きのベッドから出ることなく掛け布団を深く被り再びの就寝に入る。 二度寝は気持ちいいものである。仕方ない。 しかし、睡魔が促す二度寝の誘惑に打ち勝たねば一日は始まらない。少女は掛け布団を強引に捲られ起こされてしまった。少女は胎児のように丸まり、眩しい朝日を目に入れないように顔を塞ぐ。 「お嬢様、お起き下さいませ」 「……」 少女は無視し、そのまま二度寝に入った。これは困った。少女を起こしに来たのは執事である。このまま二度寝をされてはまだ日も昇る前から懸命に仕込んだ朝食が冷めてしまうではないか。よいしょ、執事は少女の襟足を摘み上げベッドから叩き出した。少女は寝起きの状態でいきなり直立体勢にされて体幹を崩し立ち眩みを起こしてしまう。 「何をするか!」 「お嬢様、早くお着替えになられて下さいませ。もう旦那様も奥様もお起きになられていますよ」 少女は溜息を吐いた。別に朝食なんて家族全員揃って食べる必要もないのに…… 別に朝はお腹が空いてないのに…… 朝食を食べるぐらいならその分眠りに時間を費やしたいと日頃から考えていた。 「カルルマン? 着替えを」 執事の名はカルルマン、少女の家である地方の名門貴族の「ダオリーブ家」に仕える男である。長身で細身の優男はその身と一体化したような燕尾服(スワロォテイル)の尾を揺らし前に出、少女の寝間着(ナイトドレス)を脱がしにかかる。少女は瞬く間に下着(ドロワァズ)一枚になるが恥ずかしがる気配はない。 カルルマンは慣れた手合で少女にドレスを着せていく。コルセットの紐を結び終えたところで少女はカルルマンに尋ねた。 「今日の予定は?」 「朝食を終え次第、ダイバー村への復興工事の視察を」 「ああ、ダイバー村か。この前の台風(テュポーン)で甚大な被害を受けていたな。御父様が行く予定ではなかったのか?」 「今日は旦那様はお城に召喚とのことです。奥様もそれに同行を。ですから、本日予定されていたダイバー村の復興工事の視察はお嬢様を代行にやるとのことです」
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