セーフワードは、愛してる。

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「俺の人生に口出しするな」 「したっていいだろ、パートナーなんだから」 「いつ俺が同意したって言うんだ?」  辟易しながら俺が言うと、ソファの後ろに回った霧生が腕を回してきた。抱きしめられる温度が嫌いではない。 「いいんだよ、俺には闇医者があってる。ここには、俺の患者がいる」 「だがお前が闇医者をしていた証拠も、密輸入されていた薬を勝手に処方していた証拠も無い。このシマの若頭はやり手らしいな」 「――あいつらは、意外と恩に厚いんだよ」 「妬けるな」  霧生は俺の頬に触れると、口角を持ち上げた。 「《Look(俺を見ろ)》」 「なぁ、霧生」 「なんだ?」 「愛してる」 「セーフワードは卑怯だ。キスしたかったのに」 「違う。愛してる」 「だから――……ほう。それは、コマンド無しでもキスして良いというお許しか?」 「お前は?」 「俺は最初からお前が好きだ。尾行中に一目惚れした」 「不埒な警視様だな」  吹き出してから、俺は目を閉じた。すぐに柔らかな感触が降ってくる。
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