セーフワードは、愛してる。

34/36
140人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「お前にも証言して欲しい。院長が、違法にグレアを用いて、冤罪を被らせたのだと」 「……今更、誰がそんな事を信じると――」 「お前の指導をしていた医師が証言した。ボイスレコーダーを入手した出版社の記者も、院長の秘書から手に入れたと話している」 「……」 「常磐。もう一度言う。真実を《Say(教えてくれ)》。お前は被害者だ。俺は、お前を信じてる」  その言葉が、仁科先生の声と重なった。俺は震えながら霧生を見た。  真摯な色が宿る彼の瞳を見ていたら、俺は思わず頷いていた。  ――アオヤマ総合病院への一斉捜査のニュース、及びその後の院長の逮捕について、テレビで見てから、俺はリモコンを手に取り、電源を落とした。霧生の話は本当だったらしい。だが俺は、霧生には話をしたけれど、法廷での証言は拒否した。 「ただいま」  インターホンは鳴らなかったが、扉が開いて霧生が入ってくる。合鍵を強請られたのは、先日の事だ。渡してしまう俺も俺だが。 「お前の医師免許、戻りそうだぞ。詳しい話は、俺には分からないが」 「別にいい。俺はここにいるからな」 「きちんと研修医からやり直して、専門医になれ」
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!