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幸せ、として良いのか、否か。それは俺には分からない。人生は続いていくものだから、いつ何があるかも分からない。だが現在、俺は霧生がいて幸せであるし、今ならば仁科医院に顔を出して、ゆっくりと話も出来るような気がしている。
「セーフワード、変えないとな」
「元々お前が一方的に決めただけだろう」
「今度は話し合って、きちんと。俺は常磐から、もっと愛の言葉が聞きたい」
「言ってろ。二度と言わない可能性が高いけどな」
俺と霧生が首輪選びに出かけるまでは、もう少し。
正式なクレイムより先に、俺達は恋人同士になってしまった。Domが大嫌いだったはずの俺だから、本当に人生、何があるかは分からない。
もう不要になった不安薬の錠剤を、この日俺はゴミ箱に捨てた。けれどケーキを叩き潰したあの日とは異なり、俺は今、霧生を大切だと確かに感じている。
(終)
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