ニ 夜見真明の視点

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 なので、うっかりタチの悪い怨霊につきまとわれたりしてしまった時など、僕は彼のその能力に頼り、また、この探偵稼業を始めてからも、こうして彼の助力を時折求めたりもしている。  だが、爆笑転じて〝笑い爆弾〟と僕が勝手に呼んでいる福来のこの能力は、その強大な威力ゆえにそうそう気軽に使えるようなものでもない……周囲に存在するすべての幽霊を残らず消してしまうそれは、明らかにオーバーキルなのだ。  消し飛んだ霊がどうなるかは定かでないが、おそらくは成仏とかではなく、完全な消滅だろう……恐ろしい存在ではあるが、僕は霊に対しても生きている人間と同様、思いやりを以て接するべきだと考えているので、悪意ある霊でなければ、それはあまりにもかわいそうだ。  だから、今回のように凄腕の霊能者でもお手上げな案件の場合のみ、彼の能力を頼ることにしている……やはり〝最終兵器(リーサルウェポン)〟と呼ぶに相応しい。  その凄まじいまでの力を持った我が友・福来善朗が、今しがた、とてつもない偉業を成し遂げた自覚もないためにキョトンとした顔で僕の方を見つめている。  ま、これなら濫用される心配もないだろうし、こんな人間だからこそ、神様がこの能力を彼に与えたのかもしれない……自覚ないので意図せぬ大事故は起きそうであるが……。 「さ、無事、仕事も済んだし帰ろうか。お礼に駅前で一杯奢るよ」  そんな〝天衣無縫〟という言葉がよく似合う我が友に、僕は神様の計らいに思いを馳せつつ、そう言って苦笑い気味に微笑みかけた。          (暗闇に呵うもの 了)
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