ニ 夜見真明の視点

2/3
前へ
/9ページ
次へ
 幼馴染である我が友人・福来善朗は、霊をまったく感じない霊感ゼロの〝ゼロ感〟である反面、実はものすごい力を持っていたりもする……彼の爆笑は、周囲にいる霊達を瞬時にして複数同時に消滅させることができるのである。  一応、霊能力のある僕としても理解不能なチート能力なのであるが、何度もその光景を見ているので間違いなくそれは事実だ。  といっても、彼自身にその自覚はなく、起きてる現象もまったく見えていないために、僕が何度説明をしてもいまだ半信半疑でいる。  確かに霊感はゼロだし、特に彼が何か修行したというわけでもないので、なぜそんなことができるのかわけがわからないが、思うに霊は陽気なものを苦手とするともいわれるし、もしかしたら、生まれつき彼は陽の気が強いかなんかして、その陽の気の塊ともいえる笑い声にはそんな力があるのかもしれない……。  視えないどころか霊をまったく感じないというのも、あるいはその能力の影響ということも考えられる……そういえばつい先日、彼が心霊動画ロケの仕事で100%何か起こるといわれる某有名心霊スポットに行ったのに、そのジンクスに反して史上初の撮れ高ゼロだったとひどく嘆いていたが、それもそんな能力の副作用なんじゃあ……ひょっとすると、そこにいた霊を残らず消しさってしまったか……。  ああ、ちなみに一発ギャグの方はただのおまけで、効果があるのはあくまで笑い声の方である。それでもあえてギャグを披露してもらうのは、独特のセンスを持った彼に気持ちよく笑ってもらうための、まあ、一瞬の方便といったところだ。  そもそも、そんな彼の能力に僕が気づいたのは、小学校高学年の頃だった……。  僕も特異な体質として〝暗闇の中で霊が見える〟ため、小さな頃からずっと怖い思いをしてきたのであるが、その年の夏休み、地元の夜祭りに友人達と出かけたその帰りのことだ。  お墓の前を通りかかると、案の定、生きてない(・・・・)人達がわんさかいたのであるが、〝視える〟と気づかれたら嫌だなと内心ビクビクしながら、顔を覗き込んでくるやつらを必死で無視していたその時、他愛のない冗談で彼が爆笑すると、その霊達が弾けるようにして一瞬で消え去ったのである。  もちろん、最初、僕は自分の目を疑った。そして、たぶん偶然だろうとその時は思ったのだったが、その後も同じような現象を何度となく目撃することとなり、さすがに確信するに至ったのだった。  それ以降、彼は僕のヒーローとなった……彼の笑い声は、僕の恐れるこの世ならざる者達を難の苦もなく消しさることができるだ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加