容疑者

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容疑者

玲子は次の日自分の携帯の着信音で目を覚ました。 「ピーピピー」 玲子は重い瞼を擦りながら「誰よ~こんなに朝早くから~まだ朝の6時じゃない~はいはい今出ますよ~」 玲子は布団の中でごろごろしながら携帯電話を探した。「どこだ?携帯~あ、ここだ~あった~」 玲子は布団の中で寝ながら手探りで見つけた自分の携帯電話を握りしめて携帯電話に出た。 その電話は警察の向田翔琉からだった。 「はい、向田さん?えっそんな事って~」 玲子は言葉を失った。 その電話は向田翔琉から容疑者として岩田理恵を逮捕したという報告の電話だった。 「あれから私考えたんですけど~理恵さんはそんな事する人じゃない。 それに遺書を防水加工の入れ物に入れて浮かばせるなんてそんな器用な事をする人じゃありません。 まるで犯人は加奈さんが初めから喫茶店一息に行く前にあの川沿いに寄ることを知っていた人物? 加奈さんと待ち合わせしていた人物だと思うんです。昨日の天気は青天だった。その前日は土砂降りの雨で川沿いはぬかるんでいた。 加奈さんの遺体はゆっくりと流されて遺書と一緒に川に浮いていたんですよね?加奈さんの服装はいつものお洒落な服装とは違って動きやすいジーパンとポロシャツの姿で靴もスニーカーだったとテレビのニュースで見ました。 でも、理恵さんはお洒落なワンピースにハイヒールでした。川沿いに行く予定があるならそんなお洒落な服装で喫茶店一息に来ますか?私、もう一度加奈さんから来た最後の声を録音していたので聞いてみようと思います。それに片方の手だけが濡れて泥混じりだったけど加奈さんを突き落としたにしては汚れが少ないと思うんです」 玲子は必死に向田翔琉に訴えた。 でも、翔琉は玲子に言った。 「昨日も言った通りここからは警察の仕事だ。 これ以上事件に首を突っ込まない方がいい。 事件に首を突っ込まないように昨日も早く帰るように言ったはずですよね。私は、哲也君 和恵さん 加奈さんの三人を殺害したのは岩田理恵さんだと思っています。昨日、川沿いで加奈さんと理恵さんが話している所を犬の散歩をしていた近所の人が目撃しているんですよ。いいですね。岩田さんが自白をしてくれればもう、事件は終わりです。 この件はこれで終わりですので、もう事件の事は忘れてください。いいですね? 岩田理恵容疑者に共犯者がいたら、玲子さん今度はあなたが命を狙われてしまうんですよ」 向田翔琉は玲子にそう言ったが、玲子は理恵は犯人じゃない。そう信じていた。 「私、もう一度……最後に残してくれた加奈さんの声を聞いてみます。向田さんは理恵さんから話を聞いてください。それじゃあ失礼します」 「ガチャ」 玲子は向田から掛かってきた携帯電話を切った。 防水加工に入っていた遺書……。 理恵さんは几帳面な性格じゃないし、どちらかというとめんどくさがりやな性格だ。 そんな事をわざわざするだろうか? それに片方の手だけが濡れているのもおかしい? もしかしたら?加奈さんは偶然に理恵さんと会った後に誰かと会う約束をしていたのかもしれない? あの川沿いの道路は喫茶店一息からは反対の方角だけど、理恵さんの家からだと通り道になる。。。 理恵さんは加奈さんを偶然川沿い近くの道路から 見かけて近寄って声を掛けた? とにかくヒントは加奈さんが最後に私の携帯電話に残した。言葉だ。あの録音した加奈さんの声をもう一度聞いてみよう。きっと犯人に繋がる何かが録音されているはず。 早速聞いてみよう。 玲子は録音している加奈の声を聞いていた。 「あなた、まさか?あなたが?あなたが哲也を殺したのね?あなたが~あなたが~キャードボン」 玲子は何度聞いても川に加奈が誰かに突き落とされたようにしか思えなかった。 そうだ、ボリュームあげて聞けば何かわかるかもしれない。玲子は携帯電話の音量のボリュームをあげた。 その時、哲也を殺したのね?の後に「違……」って言う声が聴こえた。 「これ?理恵さんの声?皆で一息で聞いた時は気が付かなかったけど~もう少し聞いてみよう」 「キャー大丈夫?ドボン」 「キャーの後に大丈夫?って聞こえる……。もしかして昨日一息に来る前に理恵さんは誰かを待っている、加奈さんを見かけた。 理恵さんは加奈さんに近づいて早く一息に行かないと時間になるよと声を掛けようと加奈さんに近付いたのかもしれない? でも、加奈さんは殺人犯と待ち合わせをしていた。それを理恵さんだと思ってあなたが?と理恵さんに言って後に下がった。 理恵さんは必死に違うと言おうとしていた。 その時、加奈さんの足がぬかるみにはまってしまい加奈さんは携帯電話を川に落としてしまった。 ぬかるみにはまった加奈さんを理恵さんが助けたんだ。この加奈さんの携帯電話の最後の音声がそう伝えている」 これを警察に持って行かないと~その前に向田さんに電話を掛けないと~。 やっぱり絵理さんが言った通り理恵さんと加奈さんは喧嘩ばかりするけど仲がいいんだ。 玲子はほっと胸を撫で下ろして向田翔琉に電話を 掛けた。 ピピーピー「おかしいな~?忙しいのかな~?電話に出ない~?」 しばらくして、電話に出たのは向田翔琉ではなかった。「もしもし~?向田さんの携帯に掛けたはず なんですけど?」 「もしもし、私は、増田ですが~今、先輩は外回りの捜査で忙しくて署に携帯を忘れて行ったみたい なんです。携帯の画面を見たら玲子さんだとわかりましたので用件を聞こうと思いまして。 哲也君と和恵さんと加奈さんを殺害した犯人に繋がる情報がわかったんですか?」 玲子は増田警部に向田さんとの朝のやり取りを全て話した。 増田警部は玲子に言った。 「僕も初めから向田先輩とこの事件に携わっています。早く事件を解決したいその一心です。 それじゃあ、その携帯の録音を聞かせていただきませんか?こっちに向かっている間、犯人に命を狙われる可能性もあるので、私が玲子さんの家に行きます。家から絶対に出ないでください。 犯人は近くにいるかもしれない?もう三人も殺害されている。今日で調べるのは最後にしてください。それに僕は犯人は岩田理恵さんだと思ってる。 後は自白を待つだけでこの事件は終わりだと思っている。いいですね?井上さん向田先輩が言った通り、これからは警察に任せてください」 玲子は「はい、わかりました」と答えて携帯を切った。 そして、玲子は増田翔太が来るのを待っていた。 30分ぐらいたった頃、増田翔太が井上玲子の自宅に着いた。 「ピンポーン ピンポーン」 「はい」 井上玲子は増田翔太を自宅に入れて自分の部屋に通した。 「このソファーで座っていてください。今、お茶入れますね」 玲子が増田にそう言うと、増田は言った。 「お茶より先に録音を聞かせていただけませんか?私は一日でも早く犯人をみつけたいし、一日でも早く向田先輩のように犯人を捕まえる立派な刑事になりたいんです」 増田の言葉に玲子は「立派です。ところであの~ 向田さんはそんなに忙しいんですか?」 増田は言った。 「いろんな、事件を担当していますからね~僕は先輩達のサポートてますから。僕に任せていただけませんか?犯人は必ず僕が捕まえます」 玲子さんはにっこり笑って言った。 「じゃあ、お茶は後にしましょうか。先に最後の 加奈さんの声を再生します」 玲子は携帯電話の加奈の声を再生した。 そして、音量も大きくした。 増田は言った。 「確かにこれは~岩田理恵さんは加奈さんを殺害していないという証拠になる。僕の携帯に録音してもよろしいですか?」 玲子は「はいと答えた」 増田は言った。「この携帯の録音を聞いた限り 理恵さんはたまたま喫茶店一息に行くときに川沿いにいる斎藤加奈さんに声を掛けて近付いた。 「早くいかないと遅れるよ」とでも言ったのでしょう。 理恵さんが近付いて来たので加奈さんが待ち合わせをしていた犯人が理恵さんだと加奈さんは勘違いをしてしまった。 そして、録音されているようにあなたが~という事を加奈さんは言いながら後に下がった。 理恵さんに殺されると思ったんでしょうね。 後に下がった加奈さんは川沿いのぬかるみに足を取られて尻餅を付いた。 その時、キャーと叫んで加奈さんは携帯を落とした。そして大丈夫?と言って理恵さんは加奈さんに手を差し出した。 尻餅をついて手が汚れていた加奈さんは理恵さんの差し出した手を握った為に理恵さんの手も汚れてしまった。 その時に落とした加奈さんの携帯は水没してしまった為にその後の会話はわからないのでここからは想像ですが、理恵さんはたぶん、私は、一息に先に行くから、早く来てね。 そう加奈さんに言ったのでしょう。加奈さんはある人と話したらすぐに行くから。とても大事な人に 会えるのは今日だけだからとでも、言ったのでしょう」 だから理恵さんはたぶん「殺人犯と会うんじゃないよね?なら私もここで一緒に待とうか?」 そう言ったことでしょう。 でも、加奈さんは「違うわよ。すぐ話したら一息に行くから」そう言ったので理恵さんは加奈さんに 「わかった。先に行くから早く来てね」そう言った そして、加奈さんはここで私と会ったことをまだ、誰にも言わないでそう理恵さんに口止めをしたのでしょう。 玲子は 「そうですたぶん。お願いです。この録音をコピーして警察の皆さんに聞かせてください」 玲子は増田にそう言うと増田は「わかりました。 私が、自分の携帯にコピーしたものをすぐに署で 皆に聞かせます」 増田の言葉に安心した玲子は 「お願いします。最初から事件に熱心だった増田刑事なら安心です。じゃあ今、珈琲入れますね。 ソファーでゆっくり待っていてください。 美味しい珈琲豆を買ったんですよ」 そう言うと玲子は自分の部屋を出て隣のキッチンに向かった。 そして、卑きたての珈琲豆の珈琲を二人分と クッキーを小皿に二人分お盆に乗せて自分の部屋に戻った。 ところがそこに居るはずの増田翔太の姿はなかった。 「あれ?トイレかな?」玲子はしばらく待ってみたが、増田刑事は戻ってこなかった。 「忙しくて呼び出しかしら?」玲子はそう思っていた。でも、しばらくするとそれは忙しくて姿を消したのではないことが鈍感な玲子にもわかってしまう事になる。 「あれ?テーブルに置いておいた携帯がない! 増田刑事の靴も玄関にない!証拠をまさか! 増田刑事は消しに来た? 全てを理恵さんのせいにする為に。 証拠を全て消された。 これから携帯の録音を別のところに録音して保存するつもりだったのに。保存すらできない。 理恵さんが無実だという証拠が全て失くなってしまった。これじゃあ理恵さんを助けられない」 理恵さんごめんなさい。私が油断したばかりに~ 増田刑事は犯人の味方?もしかすると犯人? いつの間にか私は哲也の秘密の彼女が犯人だと思っていた。でも本当に哲也の秘密の彼女が犯人なのだろうか? 玲子は急いで渋谷東署に電話を掛けた。 「もしもし~私、井上玲子と言います。増田翔太 さんいますか?井上玲子と伝えてくださればわかりますので」 玲子は渋谷東署にそう伝えた。 ところが渋谷東署の職員は玲子に言った。   「増田翔太刑事は急に、一身上の都合で退職したんですよ。こちらも急に辞められて困っているんですよ。引き継ぎもしないで」 玲子は驚いてもう一度、聞いた。 「そうですか退職?そんな急に……あの~向田翔琉さんは~居ますか?」 渋谷東署の職員は言った。 「それが~増田さんがやってた仕事を全て引き受けていて忙しそうに仕事をしていたんですが~今日のお昼から連絡が取れなくなったんです」 玲子はその話を聞いて恐ろしく怖い胸騒ぎを覚えた。 向田さんにもしもの事が何も起こらなければいいけど~。もし、殺害されていたら~。まさかそんな事はないわよね~?玲子は心の中で考えていた自分の考えを打ち消していた。 それにしてももしかしたら?増田刑事まで犯人側だと言うことなのか?玲子は信じられないという気持ちで一杯だった。 そして、玲子は向田刑事が増田刑事に殺害されてしまったのではないか?そんな不吉な予感を感じていた。
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