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中村玲子が公園のお母さん方の聞きこみを終えて
そろそろ埼玉の自宅に戻ろうとした時にomg株式会社の斜め前に一軒の居酒屋がある事に気がついた。
その居酒屋はまだ準備中だった。
「そう言えば~哲也はたまに会社の斜め前の居酒屋で同期の仲間と一緒にお酒を飲むって言ってたな~たぶんあの居酒屋かもしれない?何か知っているかも?もしかしたら哲也は秘密の彼女の事をお酒を
飲んでいる時にぽろっと言ってしまった可能性も
あるわ」
中村玲子は公園の聞き込みに協力してくれたお母
さん方に御礼を言ってomg株式会社の斜め前のまだ準備中の「お疲れ様」と言う居酒屋に向かった。
中村玲子は何か知っているかもしれないという期待を膨らませながら店のドアを叩いた。
店の中から三十歳くらいの女の人と同じ歳くらいの男の人が出てきた。
「あの~まだお店は準備中ですので~あれ?あなた哲也君のお姉さんね?」
「この度は~哲也君があんな事になってしまって~」
中村玲子も「告別式に来てくださった~ここの店主だったんですね。告別式に来てくださりありがとうございました」
店主は「いいんですよ。哲也君のことで何かわかりましたか?」
中村玲子は驚いた「あの~店主のお二人も哲也は
自殺じゃないそう思ってるんでしょうか?」
店主の二人は言った「勿論自殺じゃないわ。哲也君は彼女にプロポーズしたいって言ってたもの」
中村玲子は店主に「あの~彼女に心当たりありますか?」そう尋ねた。
店主は中村玲子に言った。「哲也君は結婚が決まるまで誰にも言えないって言ってたわ。でも哲也君が彼女に貢いでいたってことはここで哲也君の話からだいたいわかったから私はもしかしたら彼女に騙されているんじゃないかしら?って心配していたの」
「そうなんだ。僕も心配していたんだ。貯金を切り崩して彼女のほしいものを買ってあげたって得意気に話していたからね。僕は彼女って何処の誰なんだ?って聞いたんだ。そしたらどうしてもそれは話せないって言うんだ」
中村玲子はいったいそんなに隠さなければならない彼女って誰なんだろう。心の中でそんな事を考えていると中村玲子の携帯電話が鳴った。
その着信は哲也の告別式の時に一番最初に
「お金を返してほしい」そう言っていた男女三人の中の木村裕一だった。
「もしもし、哲也のお姉さん……。哲也が会社の
休みの日にこっそり女の人と会っていたイタリアンレストランがわかったんですよ」携帯電話で哲也の友人の木村は中村にそう言った。
中村玲子は木村裕一に尋ねた。
「えっ?本当!それはどこ?」
木村は言った。
「その店の名前はイタリアンレストラントマトですよ
埼玉県川越にある有名なレストランです」
中村玲子は携帯を持って言った。
「今から私もそっちに向かうわ。その店は私の家から歩いて10分のところにある。哲也と昔よく行ったお店なの。一緒に聞き込みしましょう。夕食奢るわよ。木村君、あと二人もいるんでしょう
渡辺剛君、えっと~三村実優さんだったかしら?」
哲也の友逹の三人は言った。
「ありがとうございます。待っています」
中村玲子は「そう、よかった。三人に奢るわね」
そう言うと携帯電話を切った。
中村玲子は心の片隅がちくりと痛かった。
何でこんなに近くに来ておきなから哲也は彼女の事を私に一言も言ってくれなかったんだろう?
渋谷の一人暮らしのアパートから埼玉まで遠いのに
日曜日には毎週来ていたの?
うちには滅多に来なかったのに。二人で頑張って
生活してきたのに。何で彼女の存在もバイクのことも、免許も借金も何で何も言ってくれなかったんだろう?私はそんなに頼り無い姉だったのか?
たった一人の家族だったのに。
中村玲子は悔しさと悲しみの感情を抱えながら自宅がある埼玉県川越の「イタリアンレストラントマト」に向かった。
中村玲子はその店で新事実を知る事になる。
それは中村玲子にとって信じがたい事実だった。
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