僕だけの箱庭

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 僕は男がしていたように、青い光をポンポンと優しく叩く。すると青い光は、僕に応えるように、グンと僕を飲み込み、自身の内部を見せてくれる。  眼前には広大な海。途端に大きな音を立てて氷塊が崩れていった。僕は、手をサッと払い、景色を変える。  緑豊かな大きな山が、恐ろしい音を立てて、地滑りを起こす。キラキラと青く光る大きな川は、ゴミや油が溜まり澱んでいる。しかし、前任者が慈しんだ者たちは、そんな自然の悲鳴には気がつかず、楽しげに日々の営みに精を出している。  力の不均衡によって起きてしまった箱庭の崩壊。それを止めるには、箱庭内の均衡を保てば良いのだ。  つまり力を持ち過ぎる者たちから、力を奪うか、数を減らせばいい。単純に考えれば、たったそれだけのことだ。  箱庭に害をなす者の排除。それも世話役の仕事のうちだろう。排除ののちゆっくりと箱庭の傷付いた箇所を修復していけば良い。  そうは思うのだが、前任者の思いを聞いた後では、そんなに簡単に彼らだけを切り捨てることもできない。彼らもまた前任者によって大切に育てられた箱庭の一部なのだから。  僕は、箱庭の中を溌剌と動き回る彼らに注視する。
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