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「この先をもう少し進むと、小さな部屋があります」
「部屋……ですか?」
僕は、手を引く先生の顔を見上げる。先生は、ただ真っ直ぐに前だけを見ながら話を続けた。
「そうです。あなたには、その部屋でこれから箱庭の世話をしてもらいます」
「箱庭とは何ですか?」
「それは、後程、部屋の者に聞きなさい」
「……分かりました。それで、その箱庭の世話をするのは、僕だけなのですか? 他の子は?」
「今回の世話役は、あなただけです」
「今回?」
「部屋によっては、複数で世話を行うところもあるのです。あなたの部屋の右隣の部屋では、2人の者が世話をしています。左隣の部屋には世話役はおらず、時々私が様子を見ています」
「えっと……複数で世話をしているような物を、僕だけで世話するのですか?」
不安の色を含んだ僕の言葉を、先生は意にも介さず切り捨てる。
「あなただけでやるのですよ」
「何故、僕だけなのですか?」
僕の言葉に、先生は至極面倒くさそうに答えた。
「だって、あなたの箱庭だもの。あなたにしか世話はできないわ」
「僕の箱庭?」
「そうよ。あなた、自分の名前は言えるかしら?」
「……アース」
「そう。それがあなたの名であり、この部屋の名」
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