僕だけの箱庭

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 僕が自分の名前を口にしたとき、先生は、一つの扉の前で足を止めた。扉にはEarthと記したプレートが掛かっていた。  先生は引いていた僕の手を離すと、コンコンと扉をノックする。しばらくして、中から、顔色の悪い瘦せこけた男が顔を覗かせた。  男は、先生に向かって深々と頭を下げる。しかし先生は、その人の事が見えていないかのように何も反応することなく、スイっと室内へ入っていった。  僕は、入口で頭を下げたままの男と、先へ行ってしまった先生の背中を交互に見比べる。入口で困惑気味に呆けていると、その人は腰を折ったまま、顔だけを上げ、じっと僕を見据えてきた。  その人の目を見つめていると、不意に、僕は、その人がもうこの先長くはないのだろうと思った。  ほんの一瞬視線を交わしただけの人の事を、何故そのように思ったのか分からない。けれど僕は、困惑と不安に頬を引きつらせながら、思わず半歩後ずさる。  そんな僕を憐れむように微笑みながら、男は手を差し出してきた。 「そう怖がることはない。私はキミの前任者だ。さあ、おいで」
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