僕だけの箱庭

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 発せられた声にも生気が感じられない。これまで、こんなに衰退した人を見たことがなかった僕は、どうしたものかと数瞬案じたが、よくよく考えてみれば、僕には、この男の手を取る以外に選択肢がないということに思い至る。  僕はしぶしぶ手を差し出し、男に手を引かれて、室内へと入った。  室内は、先ほど通ってきた道と同じように暗かった。しかし、壁面や天井、床に至るまで、光を放つ砂が撒かれているのか、所々に光を感じる。先に部屋へと入っていた先生は、部屋の中央部でしきりに何かを覗き込んでいた。  僕の手を引いた男が、先生の背後に立つと、先生は、振り返ることもなく、口を開いた。  「それで? 状況はどうなの?」  僕には、その質問の意味が分からなかったが、どうやらその質問は、僕にではなく、男に向けられたもののようだった。  男は、僕の手を握ったまま、再度頭を垂れ、無念そうに声を絞り出した。 「やはり、このままでは崩壊は免れないかと存じます。マザー・ソル」 「そのようね。まぁ、私としては、箱庭は別にいくつもあるのだから、このまま消滅してしまっても良かったのだけれどね。運良く後継者がいたのだから、もう少し様子を見ていきましょう」 「ありがとうございます。マザー・ソル」 「引継ぎが済み次第、あなたは、ルナとなり、私の陰にお入りなさい」 「御意に。マザー・ソル」
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