第1話植物性魔石を使った紅茶

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第1話植物性魔石を使った紅茶

 小鳥の囀りによって私は瞼を開く。ぼやけた視界の中で見慣れた姿の彼を探す。 「おはようございます、お嬢様」 「おはよう、藍君」藍色の髪がとても綺麗で私が彼を拾った時そう名付けた。  窓から差す柔らかな日の光に彼の髪と肌が照らされる。艶々と光沢を放つ髪に雪のように白く陶器のように凹凸が無くすべすべとした肌に透き通った黄金色の瞳。きっと彼の生まれが私と同じ或いはそれ以上ならその容姿と膨大な魔術の知識を使いもっと簡単に宮廷魔術師となれただろう、なんて朝から悪い夢を見た所為かもしもなんて都合のいい事を考えてしまった。 「顔色が優れないようですので、植物性食用魔石を使った紅茶なんて如何でしょうか」 「魔石っ!!!」私はベッドから降り、簡単な魔術を使い髪を整え衣服を着替えた。  因みに魔石には植物性、動物性の2種類があり動物性の物は魔物から入手でき、安いものから高価な物、小さい物から大きい物までと長い間売られてきた。  しかし、植物性の魔石は1000年程前に起きた大戦の為に植物性の魔石の大量生産する技術はおろかどの魔植物から抽出出来るのかさえ分からなかった。 十年前に古代魔術を巧みに扱える転生者が現れそれを東の国言織(ことおり)の国が独占販売をしていた為とても高価且つ入手困難を極めていたが、最近では私の生まれ育ったこの国、水命(すいめい)国でも比較的安価で入手出来るようになった。 「植物性の魔石は美味しいですからね。栄養も豊富でお身体に良い」藍君の作る料理はとても美味しいので藍君が言った言葉は間違いないだろう。  藍君は「時間短縮です」と言って魔導書を開き「奥義壱:究極の紅茶」と呟く。こういうのって才能の無駄遣いでは、と昔、西の日栄(ひえい)国の王子であり私の従兄弟に当たる極夜様がそうアイ君に言うと「この奥義でお嬢様を喜ばせる事が出来たならこれは才能の無駄遣いではありませんよ」と謎の理屈を言っていたなと思い出した。  回想している内に紅茶の用意が整ったらしく私は席に着く。  静かにかつ美しく彼は紅茶をコップに注ぎ、私の前に優雅に置く。 紅茶の色は三日月を連想させられる色合いでとても綺麗だ。ふぅっと紅茶に息をかけて少し冷ましてからそっと飲む。フルーティでそれでいてあっさりとした味でとても美味しい。 「水美果と併せたらもっと美味しくなりそう」水美果とはこれまた言織の国の魔術師が復元させた魔植物であり外側は水のようにプルプルとしていてゼリーみたいに柔らかいのだが中心部に近づく程シャーベットになりとても美味であの魔術師は歴史的に大きな功績を残したのだなと改めて感じる。 「今度買っておきますね」 「えぇ、頼んだわ」 これはお嬢様とその従者が美味しいグルメを満喫する物語である
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