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「ち…違うんです!今はまだいいと言っていただけで、子どもが欲しくないとは一言も…」
遼太郎はしゅんとしてしまった…という言葉がよく似合う様に、叱られた子どもの様な表情をしながら目を逸らし、肩を丸めている。
そんな遼太郎の姿を見て今しかないと思った一華は意を決して言葉を紡いだ。
「…遼太郎さんは私に言ったのです。子どもを望むのならば他の遺伝子を貰えばいいと…」
一華の言葉に隆志と遼太郎は小刻みに震えていた。
(私は…母さまのようにはなりません。母さまがそう望んでいるのだから…そして私も…。私は…東條の操り人形にはならない)
「遼太郎…お前はなぜそんな事を…私が妾の子を東條の血として認めなかった理由が分かるだろう!?私がお前を認めたのはお前がそれなりの血筋を持ち優秀だからだ!どこの馬の骨とも分からん男の血など許される訳が無い!」
一華はその言葉を聞いて改めて感じていた。
隆志にとって自分という存在が東條の血筋を繋ぐだけのものであり、我が子として、娘として愛おしい存在ではないのだという事を。
(分かっていた事よ…でも…言葉にして聞くのはやっぱり辛いものね…母さま…あなたはなんて強い人だったの…)
噛み締めた唇の痛みと比例する様に言葉の刃が心を刺激していく。
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