46人が本棚に入れています
本棚に追加
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「一華!あれはどういう事だ!?」
普段はほとんど会話のない空間に遼太郎の怒号が響き渡る。
「父さまには知って頂きたかったのです。東條の血に関わる事ですから」
遼太郎は一華の正論と、怒号をあびても顔色一つ変えずに淡々と言葉を口にする姿に苛立ちを隠せずにいた。
「お前は俺の顔に泥を塗ったんだぞ!?今まで築き上げてきたものを壊してしまうかもしれない事が分からない訳じゃ無いだろう!?」
今にも掴みかかってきそうな剣幕で睨みをきかせながら詰め寄る。
そんな姿を冷めた眼差しで見つめる一華に遼太郎への情はもう感じられない。
「勿論です。ですが私にもあなたの妻としての情がございました。それを踏みにじったのはあなたです」
「な!?」
汐らしく、常に一歩ひいて夫である自分を支えてきた一華を見てきた遼太郎は、今目の前にいる一華は別人なのではないかとすら思えていた。
「遼太郎さん…私はあなたのお飾りにはもうなりません。私は東條の人間ではあるけれど、一華という一人の人間でもあるのです」
もう操り人形にはならない。
一華の強い決意が伝わる言葉が熱を帯びて遼太郎の耳に響いていく。
最初のコメントを投稿しよう!