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「それはどういう意味だ…?俺はお前の事を飾り物の存在だなんて思った事は無い!」
「…遼太郎さん…私…知っているんです…あなたが2年程前から浮気していた事…」
「…な!?何を根拠にそんな事を…!」
「遼太郎は浮気をしている」
一華から出た意外な言葉に動揺が隠せない。まるで不意に流れ弾を食らってしまったかの様に身動きが取れなくなった。
「…相手の方は嫉妬深いのだと思います…初めは知らない宛先からのメッセージでした。何も書かれていないものがほとんどで…ですから私も気には止めていなかったのですが、暫くしてからあなたと一緒に写った写真が送られてきました」
浮気を知った経緯を淡々と語る一華の目は輝きを失っている。
言葉を口にする度に強く握られた手が一華の心を物語っていた。
遼太郎はもう言い逃れ出来ないと思ったのかベッドに深く腰を下ろし肩を落としていた。
「…最近では電話が掛かってくるのです。無言だったり、笑い声が聞こえてきたり…電話に出なければ呼び出し音が鳴り続けます。そんな日々が続いておりました」
泣いてはいけない。
そう言い聞かせてはみるものの、溢れ出た感情を抑えきれる自信が無かった。心は氷の様に冷たいのに目からは熱い雫がこぼれ落ちてくる。
「だから私に愛情が無くなってしまった事は分かっていました。それでも私は…形だけでもいいから愛して欲しかった。私はあなたの妻で…あなたを夫として慕っておりましたから…」
偽りの愛でも良かった。
虚しくても良かった。
それでもきっと形に残る愛があるのなら、それに縋って心を保つ事が出来たから。
だけど遼太郎はその全てを否定した。
偽りの愛ですら与えてやる事は出来ないのだと―――。
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