32

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「…あらそうなの。私からも遼太郎さんにはよく言って聞かせるわね。貴方ももう若くはないのだからって…。それに貴女も今年で32になるのでしょう?赤ちゃんを産むのなら早ければ早い方がいいわ」 カチャン… 上品な香りが台無しになる… そんな事を思いながらも一華は表情を崩す事は無かった。 立ったままで、正面で優雅に座りながらお茶を口にする義母を細めた目で見つめている。 「そうですね。でもこればかりは授かりものですから…ご期待に添えず申し訳ございません」 頭を垂れてふわりと下へ揺れる栗毛色のロングヘアーは艶やかにしなやかに輝きを放っていて年齢を感じさせない。 毎日丁寧に整えられ、ケアされた毛髪は心とお金の余裕の証。 ただし一華の場合前者には当てはまらなかった。 それでも彼女は名のある家柄に相応しい容姿を保つために日々努めているのである。
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