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「…はぁ。私ももう可愛い孫が 居て当たり前な年齢になってしまったのねぇ…嫌だわぁ。うふふ」
外見を取り繕う事に余念が無い義母はアンチエイジングと呼ばれているものならば何でもしている。
シミの除去、フェイスリフトにヒアルロン酸注入…その甲斐あって還暦を迎える義母の外見は年齢よりも10は若く見える。
美は財力で作ることも保つことも出来てしまうのが現代社会なのかもしれない。
「お義母さまはお若いから孫が居るような年齢には見えませんよ。いつまでも若々しくて素敵ですわ」
「あら、一華さんたらお上手なんだから。でも私が可愛い孫を望む気持ちは分かって頂戴ね。もちろん男の子よ」
うんざりするような世界は、現在でも存在する。
一見華々しく見える財力と権力を持ち合わせた上流階級と呼ばれるこの世界は作りものの幸せと底を知れない欲望で埋め尽くされた明ける事の無い夜の様な世界だ。
「はい。心がけております」
自分の為だけに笑えていたのはいつの事だっただろうか…笑顔の裏で一華はただ心のままに笑えていたあの日に思いを馳せていた。
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