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「君の事は愛しているし大切に思っているよ。でも俺はようやく東條グループの一員として認められて仕事も任せて貰えるようになったんだ。だから今は子どもの事を考える余裕は無いし、前にも言った通りネタにされるつもりは無い」
分かっていたつもりだった。
だけど再び面と向かって言われてしまうのはあまりにも残酷で、一華の目は輝きを無くして目の奥にあった強い意思は微塵も感じられなくなってしまっていた。
ジリジリと熱くなる瞼を軽く押さえながら溢れ出しそうになる感情を必死に堪えている。
「…分かり…ました…」
掠れた声を聞いた遼太郎はそっと一華を抱き寄せて囁いた。
「…君がどうしてもすぐに子どもを望むのなら…俺は構わないから遺伝子を…貰えばいいじゃないか」
遺伝子を貰えばいい
その言葉が一華の胸を貫く鋭い刃の様に深く、深く突き刺さっていった。
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