10人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
よかったね定岡さん
ご主人様は、基本的には労働者の労使環境を考えてくださる方でございましたので、18時で一旦業務が終了することになっておりました。
逆に言うと、18時以降のご奉仕については、私達には明確な条件はなく、働きたければ好きに頼むぞ?三田村さん。と仰っておられました。
流石に18時以降は働きませんと言う不出来な僕はいないと思いたいのですが、ああ、川津さんと二枚舌さん(ふましたさん)は別でございました。
1度、僕として話をする必要がございましょう。
ところで、ここは私達僕の為にご主人様が用意してくださいました、憩の空間、勘解由小路家に隣接する仮定的存在の城でございました。
「むごう!むぎごごごご!」
ところで俺様に向けて言う言葉はないのか?!お前等あああああああああああああああああああああああああああ!!!
定岡さんは、びたんびたんと跳ねておられました。
「静かになさい定岡さん。寧ろよかったではありませんか。あれで姫様のお1人でも落下され、お怪我などされれば、貴方はご主人様に消されていたのですよ?」
「左様。定岡クッションはよい性能であった」
「むんがああああああああああああああああ!!」
お前が言うなヴィネの馬鹿がああああああああああああああああああ!と仰りたいようでございました。
「では、今日の総括を行いましょう。ロビーに集合してください。服部さん、定岡さんの縄を切っておあげなさい」
「もうホントやだああああああ!あいつ等あああああああああああ!ありがとう!ありがとうねアンドラス!ずっと友達いいいいいいい!うわああああああん!」
自由になった定岡さんは、とても情けない姿を晒していらっしゃいました。
私の自室に戻り、しばしゆったりした時間をすごさせていただきました。
かつて、私に思いを寄せていただいた碧様とてここはご存知ない空間でございましたが、ああやはりまたいらっしゃいましたか。
「お休みになれましたか。姫様方は」
「見た通りだ。シャックス」
狐池さんは、三つ子様達にお腹を撫でられていらっしゃり、ほぼ無惨な姿を晒していらっしゃいました。
おや。眠られた位置がよろしくない。水色様は、ソファーから落ちそうでございました。
恐れながら、抱きますと、きゅっと、小さな体が私を求めていらっしゃるようでございました。
無力な赤子を抱く執事の、無上の喜ばしいひとときがございました。
「三田村さんーー気を付けて」
はて?
私は、背後に強力な霊気を感じて、振り返りましたところ、巨大な4足獣と、それに跨がる女性を認めたのでございます。
「久しぶりね。シャックス」
はてさて、これは。
「お久しゅうございます。アースツーに移り住まわれた、アリオーシュ様」
姫様がお怪我を負うことはあってはならない。
突如現れた、異界の女神と戦いながら、姫様達をお守りするのは。
「如何いたしましょう?ご主人様」
私の小さな呟きは、隔絶された空間の中に消えていったのでございました。
後半へ続く
最初のコメントを投稿しよう!