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「ダメな時は何やってもダメなのに、上手くいく時はあっさりしたもんだよな、……おまえもそうだろ?」 「……あぁ、本当に」  二年もの間囚われ続けていた呪縛からようやく解放された杉浦は本当にすっきりとした様子だ。 「……ほんと、タイミングって重要だよな」  杉浦がそう呟く。 「あぁ、そういえばちょうどいいタイミングだよな」 「なにが?」 「もう、うち出てけよ」 「あぁ、うん」 「……妙にあっさりしてんな。それでいいけど」 「オレ、英理奈さんと一緒に住むことにしたし」 「マジ?もうそんなとこまで話進めてきたの?」  本当にこうと決めたら前のめりなやつだな。 「うん、もう絶対手放す気ないから。でも英理奈さん、自分が六歳年上でバツイチなの気にしてるみたいで事務所とうちの親にも許可得てからとかいろいろ条件出されたけど、子供じゃないんだし、まぁ大丈夫だろ」  そして楽観的だ。  杉浦は出会った頃からどこか飄々としていて掴みどころが無く、音楽なんてやってる割に大人数で群れるのが苦手なタイプだった。だけどその分杉浦自身が気に入った物や人に対しては人一倍執着心があってずっと大事にする。  そしてそんな杉浦だから一緒にバンドをやりたいと思ったし、それは、これからも、変わらない。 「ま、何にしても、良かったな」 「おまえもな」  そう言って杉浦はオレたちが出会った十八歳の頃と対して変わらない表情で笑う。  おまえは、オレたちのおかげで音楽を続けていられると言ったけど、それはオレたちだって同じなんだよ。  杉浦じゃなかったらバンドを続ける意味なんて無かった。  オレたちが音楽を続けていられるのは杉浦の歌と曲と、おまえの存在があってこそなんだ。  だから、オレは、おまえが歌えるなら、なんだっていいんだよ。  なんて、今はまだこんな事、わざわざ口に出して言ってやらないけどな……。  
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