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「今日さ、ステージに上がる前に少しだけ杉浦くんと話したけど、その時の表情が今まで見たこともないほどに良い顔してて、それ見て、あぁ、もう大丈夫だなって。……一人の女性の存在がこれほどまでに精神に大きな影響与えるのは、長い目で見ると正直心配な面もあるんだけど、まぁそれも含めてもうなるようにしかならないし、後はもう、二人を信じるしかないよね」
「……そうだな」
斉藤はオレや杉浦より実際一つ年上なだけに上から目線な発言も多く、さっきのようにたまにイラッとさせられる事もあるけど、実はメンバーの中でいつだって誰よりも冷静にその時の状況を見てくれている。一部のファンの間で斉藤が「オカン」と呼ばれているのも趣味が料理という理由だけでなく、そういった人柄もわかる人にはちゃんと伝わっている、ということだろうか。
「だから今日はもう余計な事考えずにとことん飲もう。せっかくあんな最高なライブ出来たんだし、もうちょっと余韻に浸りたい、……すみませーん、生二つくださーい!」
その案にはオレも大いに賛成だが、そもそも席を移動してきてまでこの話題を振ってきたのはお前だろ……。もう言い返すのも面倒で運ばれてきたビールグラスをそれぞれ手に取り今日何回目かわからない乾杯をする。
「あー!あたしも混ぜてー!おつかれー!かんぱ〜い!」
テンション高めにオレと斉藤の間に割って入ってきたのは、今日の対バン相手のベーシスト、アミちゃんだ。
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