4人が本棚に入れています
本棚に追加
「……お疲れ」
「お疲れさま。アミちゃん今日ありがとね。僕は楽屋のモニターで観てたけど、あいかわらず最高だったよアミちゃんのベース。また今度ゆっくりライブ観に行くね」
「こちらこそ呼んでくれてありがとう。いつか対バンツアーとかもしたいよねー」
「あーそれいいねぇ楽しそう」
こういう時、斉藤のコミュニケーション能力が心底羨ましい。流れるような二人の会話に相槌を入れる事すら出来ずにしばらくオレはただ横で大人しく座っていた。すると……、
「あ、僕ちょっとフジくんと玉ちゃんとも話してくるね、一次会で全然喋れなかったし。アミちゃんまたねー」
「またねー」
そう言って斉藤は立ち上がりアミちゃんのバンドメンバーであるギターボーカルの藤原、ドラムの玉田の元へ向かった。……斉藤が去り際に一瞬意味ありげな視線をオレに寄越してきたけど、そういう事かよ。だからといってそんな唐突に二人きりにされても、何を話せばいいのか……。そんな事を思っていたら、アミちゃんの方から口を開いた。
「杉浦くん、もう帰っちゃったんだね」
まさかのうちのギターボーカルの話か……。
「……あぁ、あいつなら一次会の途中で帰ったよ」
「そうなんだ。見ないと思ったら、今日全然話せてないなー」
心底残念そうな顔をしている。
あぁ、そういう事……。
最初のコメントを投稿しよう!