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山本 和也-5
──それは奇妙な光景だった。
住宅が並ぶ通りに、脈絡も無く急にその神社は存在していた。
新築の戸建ての住宅に挟まれ、鬱蒼とした樹木が生い茂っている。
まるでそこだけ空間を切り取って貼り付けたような違和感があった。
理屈から言えば、先に神社が存在し、後から周囲に住宅が建ったことになるが、
その神社は周囲からだけではなく、なんというか、この場所自体に馴染んでいない──
そんな感覚を覚えた。
おかしい。
この光景に見覚えがないのだ。
勿論、小さい頃の記憶というせいもあるだろうが……
しかし……
──こんな光景を覚えていないなんて有り得るだろうか。
かなり昔からある神社だし、なんなら七五三のお祝いの時に連れられて来ている筈なのだ。
神社の名前は勿論のこと、ここで祀っている神様の名前だって知っている。
小さい頃の記憶を思い出す──
しかし、「来たことがある」という事実は思い出せても、その時の光景は何故か一切思い出せなかった。
何かがおかしい。
まるで誰かに、後から知識だけを植え付けられたかのような──
和也はある疑念に行き着く。
──本当にこの神社は昔からあったのだろうか?
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