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「レ、レン君…、ここ学校だよ?」
「ごめん、我慢出来なかった。」
「誰かに見られたんじゃ…」
「誰も見てない。」
「で、でも…」
俺はもう一度あの子の唇を奪った。
あの子はトロンとした表情で、可愛さ倍増だった。
気が付けば、俺はあの子を抱き締めていた。
「練習は今日で終わるけどさ、これからもずっと一緒にいようよ。」
あの子はコクンと頷き、俺たちはまたキスを交わした。
合唱コンクール本番では、ミスなく出来た。俺の指揮も、あの子のピアノも、みんなの歌声も、今まで至上最高の出来栄えだった。結果は見事金賞。努力が実って幸せいっぱいだった。みんなの笑顔も、あの子の笑顔も、キラキラ輝いていた。
中学校生活最後の学校行事が終わり、俺たち3年生は、受験へ意識を向ける時期となった。
ある日の帰り道、俺とあの子は受験の話題になった。
「ヒカリちゃんはどこの高校受けようと思ってるの?」
「うーん、成和高校かな。大学進学のこと考えると、そこが一番いいかなと思って。レン君は?」
「俺は…、紅陵高校考えてる。でも今の状況だと、ちょっと点数足りなくてさ。頑張んなくちゃいけないって分かってんだけど、なかなか伸びてこなくて、悩んでる。」
姉ちゃんや駿太君のように、大学は医学部に行きたいと考えていた。その為にはこの高校に行くしかない。しかし、現実にはまだ点数が足りていない。俺は不安の沼にハマりそうだった。
「じゃあさ、私が通ってる塾に一緒に行かない?評判いい所だし、どう?」
「行く。俺、行くよ!ヒカリちゃんと一緒なら頑張れる!」
俺は帰宅してすぐに母ちゃんに頼み込んだ。母ちゃんは了承してくれたが、姉ちゃんが口を挟んだ。
「レン、どうしたの?急に。塾なんて今まで一言も言ったことないじゃない。何か他に理由あるんでしょ?どうせ友達と一緒とかそんな感じじゃないの?」
「ち、違うよ!純粋に点数上げたいだけだから。いい塾紹介してもらったんだよ。有名で評判いい所。」
「誰に?」
「えっと……、それは……、クラスで一番頭いい奴だよ。」
「ふーん?何か怪しいけどね。」
確かに、あの子と一緒ってのも理由の一つではあるけれど、俺は本当に単純に点数を上げたかったのだ。
結局母ちゃんのお許しが出て、俺は晴れてあの子と一緒に塾へ通うことになった。
学校が終わり、18時から20時まで塾で学習する。塾ではあの子と同じクラスになり、お互い切磋琢磨しながら勉強に励んだ。
塾が終わると辺りは真っ暗。俺は毎回あの子を家まで送り届けてから帰宅した。プチデートとして、少しの時間も満喫していた。受験が終わるまでなかなか遊びに行けない俺たちにとって、学校帰りと塾帰りはとても貴重な二人だけの時間だった。
高校生になっても、大学生になっても、ずっとずっとあの子と一緒にいたい、そう思っていた。
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