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 朝、  この教室に入ると、  誰も居ない。  俺がいつも一番乗り。  二番目に来るのは、友人の康哉(こうや)。  そして、  三番目に来るのが……、  あの子。  あの子は窓辺の席に座り、いつも静かに本を読んでいる。  柔らかな空気を纏うあの子は、  本を閉じる瞬間、必ず  優しく微笑む。  そんなあの子の、  幸せそうなその瞬間を、  この目にとらえることが、  俺の日課。  あの子はいつも、  列からはみ出している机を  そっと直してくれる。  あの子はいつも、  みんながやりたがらない嫌な仕事を  黙ってさりげなく引き受ける。  あの子はいつも、  誰かが落としたままのペンを静かに拾い、  気付かぬうちに机に置いてくれる。  あの子はいつも……  誰も見ていない所で  みんなの為に  いろんなことをしてくれている。  誰にも気付かれず、  誰にも感謝されることもないのに…。  それでもあの子は、  今日もまた誰かの為に、ほら。  俺はちゃんと気付いてるよ。  無口な君は、  とても美しい心の持ち主だってこと。  
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