50人が本棚に入れています
本棚に追加
2
いつしか俺は、あの子が気になる存在になっていた。あの子の、心の美しさに惹かれていった。
「レン、部活行くぞー!」
康哉が俺を呼ぶ。
本当は、俺はこの教室を出る前に、あの子に声をかけたくてチャンスを覗っているのに……。
「ほら、レン、早く!行くぞ!」
康哉に腕を引っ張られて、教室を後にする。せめてもの残された短時間で、あの子に小さく手を振ってみる。
しかしあの子は、全く見向きもしない。
「なぁ、お前さ、毎日誰に手振ってんの?」
廊下を歩く康哉が俺に問い掛けた。
「あ、いや、別に?誰にも?」
「まさか、お前……。」
康哉、もしかして気付いたか……?
「俺には見えてないけどお前だけに見える何かってヤツか?」
康哉が単純で良かった。俺は思わず吹き出した。その場を適当にごまかし、すぐに話題を変えた。
この恋心───────────────
もう少し俺の中で温めていきたい。
だから、まだ誰にも言わないでおくよ…。
最初のコメントを投稿しよう!