2

1/1
前へ
/34ページ
次へ

2

 いつしか俺は、あの子が気になる存在になっていた。あの子の、心の美しさに惹かれていった。 「レン、部活行くぞー!」  康哉が俺を呼ぶ。  本当は、俺はこの教室を出る前に、あの子に声をかけたくてチャンスを覗っているのに……。 「ほら、レン、早く!行くぞ!」  康哉に腕を引っ張られて、教室を後にする。せめてもの残された短時間で、あの子に小さく手を振ってみる。  しかしあの子は、全く見向きもしない。 「なぁ、お前さ、毎日誰に手振ってんの?」  廊下を歩く康哉が俺に問い掛けた。 「あ、いや、別に?誰にも?」 「まさか、お前……。」  康哉、もしかして気付いたか……? 「俺には見えてないけどお前だけに見える何かってヤツか?」  康哉が単純で良かった。俺は思わず吹き出した。その場を適当にごまかし、すぐに話題を変えた。  この恋心───────────────  もう少し俺の中で温めていきたい。  だから、まだ誰にも言わないでおくよ…。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加