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2022年7月5日(没供養2)
「あ、流れ星だ」
「綺麗ですね」
「流れ星って口で3回言うと願い事が叶うって言うけど、絶対そんな事無いよね」
「それで本当に叶えられれば、世界の悩みも全て消えますしね」
「……西野さんは、流れ星に何を願うの?」
「貴方と来世で出会わないように、と」
「その心は?」
「貴方の事、心の底から嫌いだからです」
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「ここのパスタ美味しいね!西野さん!」
「世良くん、うるさいです」
「ああ、失敬」
「丁寧語にしても、声量で台無しです」
「言葉は難しいね」
「……どうして私に付きまとうんですか?大学で1度ご飯の席で一緒になっただけですよね?理解出来ません」
「一目惚れって奴さ」
「好きになって3年後にはその恋情を忘れるらしいですよ」
「その科学すら、乗り越えてみせるさ」
「うるさいです」
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「神社、人いっぱいだね」
「まあ大晦日ですし、仕方ないでしょう」
「フライドポテトの屋台無いかな。それも大盛りの」
「視線が忙しないですね」
「食べたい物がここには沢山あるからね。子供の時なんて屋台どころか食事だってまともに取らせてくれなかったし」
「……なんて反応したらいいか、分かりません」
「笑えばいいと思うよ」
「人の不幸を笑える程、私は人間を捨てていませんよ」
「西野さんは今日、神社で何を願うの?」
「願いを口に出すと叶わないらしいですよ」
「 じゃあ2番目の願い事でいいよ」
「……貴方と来世で出会わないように、と」
「悲しいなあ」
「存分に悲しんで下さい。それが本望ですから」
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「今日はバレンタインだよ。チョコを頂戴。お腹ペコペコなんだ」
「チョコなんて持ってるわけ無いでしょう」
「えー?」
「不服そうな顔をしても、駄目です」
「じゃあ何か別の物を頂戴。ホワイトデーは3倍返しにするからさ」
「……目、瞑って下さい」
「……」
「手、空けて」
「はい……って紙?」
「フライドポテトのクーポン券です。これで好きなポテトでも買ってください」
「僕の好きな物、覚えてくれてたんだ。ふーん」
「たまたまですよ」
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「僕達が大学で出会って、4年になるね」
「まさかこんなに一緒にいるなんて、当時は思いもしませんでしたけどね」
「好きな気持ちは3年経つと忘れるって西野さんは言ったけど、消えてないよ。気持ち」
「……そうですか」
「……あ、流れ星」
「綺麗ですね」
「西野さんは、今年は何を願うの?」
「……貴方と来世で出会わないようにと」
「4年経っても、変わらないままか」
「……理由は、少し違いますよ」
「え?」
「来世なんて考える必要無いほど、幸せって意味です」
会話だけの小説を初めて書きました。バレンタインのチョコを渡してから時間が経ちすぎていますが、本当はもう少し中に物語が入る予定でした。
題名は「会話」です。
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